定年退職でも失業保険はもらえます・・・
といわれても、
「自営業の自分には定年なんて関係ない!」と思うでしょう。
自営業者に定年はないから自分の意志でいつまででも働ける。
だから、自営業者に失業保険はない。

失業保険は雇用保険の制度から支払われるものです。
自営業者には「雇用される」という概念がないため、雇用保険に加入することはできないのです。
実はこの雇用保険はたいへんメリットの大きい制度です。
もしも自営業を廃業して会社員になるという選択肢をお持ちなら、この制度について知っておいて損はありません。
なかでも注目すべきは「失業保険」です。
この、会社員だけが得られる恩恵について詳しく知ることは、今後の選択に大きく影響するかもしれません。
会社員が直面する定年という現実
定年退職のタイミングで私たちはいくつかの選択をせまられます。
その選択肢の中には「引退」とか「リタイア」とか、ちょっと魅力的な言葉もちらつきますが・・・
老後資金にふあんがあるなら、そんな道はありません。
まだまだ働かなければならないのです。
そうなると次の選択は、同じ会社で再雇用で働くか、あるいは新しい職場に再就職するかというもの。
再就職という道を選んだ場合、理想的なのは定年退職の時点で次の就職が決まっていることですが、そううまくいかない可能性は十分あります。

60代で働くことが珍しくない世の中になったとはいえ、
シニアの求人の現実はけっして甘くはありません。
結果的に、定年退職の時点で次の職場が決まっていないと、翌日から無職ということになってしまいます。
働かなければならないのに職が無い。
いわゆる「失業」です。
そしてその失業状態にあるときに給付金を受け取れる制度が今回のテーマである「失業保険」というわけです。

一般的に失業保険といわれている給付は、正式には「雇用保険の求職者給付のなかの基本手当」といいますが、ここでは「失業保険」で統一したいと思います。
今現在会社員の方はもちろん、自営業を廃業して会社員になる選択肢をお持ちの方でも、老後資金に不安があるならまだまだ働き続けなければなりません。
そんな時に選択肢のひとつになるかもしれない定年退職後の失業保険について、あらかじめ知っておくことはけっして無駄にはなりません。
ということで、
失業保険の「受給資格」や「受給金額」、
そして「定年退職者ならではの特例措置」などについてまとめていきます。
定年退職でも失業保険はもらえます
定年退職には引退というイメージがあるので、いわゆる「失業」とは違う感じがします。
そのためか、失業保険とは無関係だと思っている人も多いようです。

たしかに「定年退職者=失業者」というのは少し違和感があるかもしれませんが、雇用保険の面から見るとそんなことはありません。
定年退職者も一定の条件を満たせば失業保険を受け取ることができるのです。
その条件とはなんなのか?
と、その前に比較の意味で、まずは一般的な失業保険の基本的なところから確認しておきましょう。
失業保険の役割り
ハローワークのウエブサイトには、失業保険についてこんなふうに書いてあります。
失業中の生活を心配しないで、新しい仕事を探し、1日も早く再就職していただくために支給されるもの。

つまり失業保険は、次の仕事を見つけるまでの間の生活資金の補助だということですね。
退職の理由がなんであれ・・
今後も働くつもりがあって、
実際に仕事を探しているという状態であれば、
失業保険の対象になるということなのです。
もちろんそれ以外にもいくつかの条件を満たしている必要があります。
では失業保険の受給条件をまとめてみましょう。
失業保険の受給条件
失業保険を受け取るためには、まずは次の2つにあてはまらなければなりません。
- 今現在、失業状態にあること
- 一定期間の雇用保険加入実績があること
《失業状態とは》
失業保険を受けるためには、現在の状況として、「失業状態にある」ことが必要です。その失業状態の定義がこの3つ。
- 積極的に就職しようとする意思があること。
- いつでも就職できる能力(健康状態・環境)があること。
- 積極的に仕事を探しているにもかかわらず現在職業に就いていないこと。
定年退職後の失業保険についても、この失業状態にない場合は受給できません。
例えば・・・
- 定年退職後にしばらく休養したい
- すぐに就職する意思があっても求職活動をしていない
- 健康状態が悪かったり、介護や看護などの事情で就職に適さない
こんな場合も認められません。
《雇用保険加入実績とは》
失業保険は雇用保険の制度からお金が出ていますから、当然のことながら、雇用保険の保険料を納めていることが前提になります。
失業手当を受け取るために必要な雇用保険加入の期間は、離職前2年間に通算して12か月以上です。
※特定受給資格者または特定理由離職者の場合は条件が異なりますが、定年退職者の場合は該当しないので省略します。
たとえ現在が無職の状態で就職先を探す活動をしていても、雇用保険の加入実績がなければ受給対象にはなりません。
ですから、
個人事業を廃業して就職先を探している場合や、非正規雇用などで雇用保険に未加入で働いてきた人などは対象外ということになります。
失業保険の1日当たりの受給額
失業状態にあり、雇用保険の加入実績の条件も満たしていれば失業保険が受給できるわけですが、ではいったいどれくらいの金額がもらえるのでしょうか。
まずは、
失業保険の1日当たりの受給額が決まる要因について見てみましょう。
離職理由・・一般受給資格者かそれ以外(特定受給資格者など)か。
年齢・・・・4段階の区分がある。
賃金日額・・離職前の給与の1日当たりの金額。この3つの項目によって1日当たりの金額を計算します。
ただ、
定年退職の場合は、離職理由的には一般受給資格者であり、年齢は60歳以上の区分になるので、影響するのは「賃金日額」だけということになります。
《賃金日額とは》
離職した日の直前の6カ月の賃金の合計を180で割って算出した金額。
つまり、
離職前の6カ月間、一日当たりいくら稼いでいたか?ということです。これは手取り額ではなく、各種手当も含んだ総支給額で、賞与は含まれません。
失業保険の1日当たりの受給額は、
この賃金日額に「給付率」をかけて算出します。
では、その給付率について見て行きましょう
《給付率とは》
離職時の年齢と賃金日額に応じて決まります。
定年退職の場合の給付率は、45%〜80%の範囲です。
45〜80%というのは幅が広いですが、
退職前の給与支給額が少ないほど給付率は高くなります。

60歳以降に退職した場合の、離職前のおよその月収(総支給額)と給付率の関係は下記の通り。(令和4年8月1日算定)
- 月収8万円:給付率・約80%(これ以下の場合、給付額は下限の2,125円/日額)
- 月収20万円:給付率・約70%
- 月収24万円:給付率・約60%
- 月収30万円:給付率・約50%
- 月収45万円:給付率・約45%(これ以上の場合、給付額は上限の7,177円/日額)
ここまでの話を整理するとこのようになります。
《失業保険の計算式》
基本手当日額=賃金日額× 給付率《基本手当日額》
失業保険は28日ごとに振り込まれますが、その1日あたりの金額です。
賃金日額と給付率によって決まりますが、金額的には、下限額の2,125円〜上限額の7,177円の範囲内となります。《賃金日額》
離職した日の直前の6カ月の賃金の合計を180で割って算出した金額です。
つまり、一日当たりいくら稼いでいたかということです。
これは手取り額ではなく、各種手当も含んだ総支給額で、賞与は含まれません。《給付率》
離職時の年齢と賃金日額に応じて決まります。
離職時の年齢が60歳〜64歳の場合、賃金日額に応じて45%~80%の範囲内ですが、退職前の給与支給額が少ないほど給付率は高くなります。
このように算出した基本手当日額を何日間もらえるかで、失業保険の総額が決まります。
失業保険の受給期間
失業保険1日あたりの受給金額の出し方がわかったところで、
次は受給期間が決まる要因についてみてみましょう。
- 年齢
- 離職理由・・一般受給資格者かそれ以外(特定受給資格者など)か。
- 勤続年数(雇用保険の被保険者期間)
この3つの要素によって失業保険の受給期間が決まります。

定年退職の場合は一般受給資格者で、年齢は60歳以上ですから、被保険者期間による受給期間は下記のとおり。
- 被保険者期間10年未満・・・・・90日
- 被保険者期間10年以上20年未満・120日
- 被保険者期間20年以上・・・・・150日
被保険者期間は雇用保険加入で働いたトータルの年数です。途中に未加入の期間があってもいいですが、
失業保険を受給した場合や1年以上のブランクがあると、リセットされてしまいますので、注意が必要です。
なお、失業保険を受給できるのは、
65歳になる前に離職した場合に限られます。
65歳で定年退職する場合
失業保険の受給資格は65歳になるまでなので、
65歳で定年退職した場合は受給対象になりません。

その代わりに用意されているのが「高年齢求職者給付金」です。
《高年齢求職者給付金とは》
- 1日当たりの受給金額は失業保険と同じ式で計算した「基本手当日額」
- 失業保険のように毎月(28日ごと)の支給ではなく、一括で支給される
- 雇用保険の被保険者期間が1年以上の場合は基本手当日額の50日分支給
- 雇用保険の被保険者期間が1年未満の場合は30日分支給
定年退職者の特例
失業保険の制度には定年で退職した場合の特例があります。
①期間の延長ができる

定年退職した後もすぐに働かなければならない場合はあまり関係のない話ですが、いろんなケースに備えて制度だけは知っておいてもいいでしょう。
失業保険が受給できるのは退職した翌日から1年間ですから、たとえば退職後1年間受給せずにいると受給期限を過ぎてしまいます。
そんなとき利用できるのが「受給期間の延長」です。
60歳以上で定年退職した場合、
退職した翌日から2カ月以内に手続きをすれば最長1年間は延長できます。
②給付制限期間がない

定年退職は自己都合退職という扱いになります。会社が決めている定年退職制度なのになぜ?という違和感はありますが、制度上そのようになっています。
その場合、通常は失業保険の給付までに1ヶ月の給付制限期間があります。
定年退職の場合はその期間無しで、
1週間の待機期間経過後すぐに失業保険が受給できます。
まとめ
定年退職した後の失業保険の受給についてみてきました。

今現在会社員の場合はもちろん、近い将来自営業を廃業して会社員になる可能性がある方にも、おおいに関係のあるテーマです。受給要件さえ満たせば、いろいろなケースで生活資金面の支えになるのがこの失業保険です。
長いあいだ働いてきたことへのねぎらいの意味があるかどうかは別にして、定年退職者には比較的有利な面がある失業保険ですが、有効に利用するためには制度をよく理解する必要があります。
当然ですが、失業したからといって自動的にお金が振り込まれてくることはありません。
受給までにめんどうな手続きが必要なのはもちろんのこと、受給資格を失わないためには、守らなければならないルールもたくさんあることは覚悟しておきましょう。
そして忘れてはいけないのは、
失業保険は「新しい仕事を探して1日も早く再就職するために支給される補助的なもの」だということです。

収入を安定させて、安心して生活するには、やはり働くことがベストであるということはいうまでもありません。
人生100年の時代。
これからの働き方についてじっくり考える。
これからの生き方についてじっくり考える。
長くなった働く期間をより充実させるためにも、この失業保険を有効に活用して、冷静に計画を立てる時間を持つことも大切です。


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