七月の雨が、一週間続いた。
観光地にある私の店は、天気に客足を左右される。晴れれば賑わい、雨が続けば閑散とする。もちろんわかってはいました。でもその年の七月は、あまりにも雨が多かったのです。
売上は、いつもの半分以下。それでも家賃は来る。仕入れの請求書も来る。スタッフへの給料日も来る。
財布の底が見え始めた頃、私は「無人契約機」の前に立っていました。
どこの街角でも見かける、あの薄暗い個室。当時のテレビでは、アイフルのチワワが潤んだ目で鳴き、武富士のレオタード姿の女性たちが軽やかに踊っていました。
お金を借りることへの敷居が、妙に低く感じられた時代。
その空気に、私も知らず知らず乗せられていたのかもしれません。
「短期間だけ。すぐ返せる」
そう自分に言い聞かせながら、操作画面のボタンを押したのです。今思えば、あの日がすべての始まりでした。
資金繰りの隙間を埋めるカードローン
自営業や個人事業主の方なら、似たような経験をお持ちの方もいるかもしれません。
観光地に限らず、飲食、建設、小売・・・季節や天候、景気に売上を左右されやすい仕事では、「今月だけ」という言葉が積み重なりやすい構造があります。
固定費は待ってくれない。でも売上は、こちらの都合など関係なく上下する。
その「どうにもならない隙間」を、カードローンはいつも静かに埋めようとしてきます。
手軽に、素早く、笑顔で。
でも、その先に何が待っているか。私の話を、もう少し聞いてください。
なぜ銀行ではなく、カードローンだったのか

「すぐ借りられる」という魔力
銀行からの融資は、書類を揃えて、担当者と面談して、審査を待つ。急いでいるときには、とても間に合いません。
でもカードローンは違います。今では申し込みはスマホ一つ、審査は最短当日。
追い詰められた人間には、その「手軽さ」が致命的に刺さるのです。
金利は知っていた。でも「短期だから大丈夫」と思っていた
カードローンの金利が高いことは、もちろん借りる前から知っていました。年利15〜18%。
銀行からの借り入れとは桁が一つ違います。
それでも「すぐ返すから問題ない」と自分を納得させたあの慢心が、その後の苦しさを生むことになるのです。

「短期で返せば問題ない」は、多くの人が借りる前に思う言葉です。
でも「短期の予定」が崩れたとき、高金利は一気に牙を剥きます。
繰り返し借りるうちに、それが「当たり前」になっていった
返して、また借りる。残高が静かに育っていく
最初の返済は、なんとかできた。でも翌月、また売上が落ちた。また借りた。返した。また借りた。
いつの間にか、
カードローンの「借り入れ可能額」が自分の「預金残高」のような錯覚を覚えたのかもしれません。
その繰り返しの中で、借入残高は少しずつ、気づかないうちに増えていったのです。
人は何にでも慣れてしまう。それが一番怖かった
気がつけば、
「足りなければカードローン」が当たり前になっていました。
怖いのは、慣れてしまうこと。最初は「緊急手段」だったものが、いつの間にか「普通の資金調達」になっていったのです。
そしてその変化に、自分では気づきにくいのも事実です。
FP資格を取ってわかった、数字の現実

年利15%で100万円借りると、1年で15万円消える
借入100万円 / 年利15% の場合
利息だけで年間 約15万円
毎月の返済が元本に届かない「最低返済額の罠」に陥ると、残高はほぼ減りません。
「30万円借りたら月いくらの返済?」を正直に計算する
借入30万円 / 年利18% / 最低返済額(残高の3%)の場合
月の返済 約9,000円 → 完済まで 約4年
総返済額は約36万円。
借りた金額より6万円多く払うことになります。
関連記事:リボ払いの罠!還暦世代も狙われる危険な支払いの正体
私が返済できたのは、運が良かっただけ
繁忙期の売上に救われた、あの夏
カードローンを返してはまた借りる・・・
そんなことを繰り返していたらどうなっていたこことか。
たまたまその年の夏は、想定よりも売上が良かったので、それで一気に返済することができたのです。会社員ではそうはいきません。
それが自営業の利点ではありますが、それはまた大きな落とし穴でもあるのです。
一発逆転に期待しながら、時間と共に借り入れ残高は膨らみ続ける。
そんな事態もじゅうぶん起こりえます。
私の場合、綱渡りはたまたまうまくいきましたが、今振り返ると、それだけのことなのです。
「そうでなかったら」と、今でもぞっとする
もし繁忙期の売上が普通だったら・・。もし雨がもう一ヶ月続いていたら・・。
そう考えると、今でも背筋が冷たくなります。
計画でも実力でもなく、運で切り抜けた。それが正直なところです。
もう一つの失敗・・カードローンの利息を経費にしなかった話
借入利息は経費になる。知ってはいたが・・
自営業をしていた頃、青色申告を自力でやっていました。控除が多いと聞いて、面倒でも自分で調べながら必死で申告書を作った記憶があります。
銀行からの借入利息は経費として計上していました。知識として、借入利息が経費になることは知っていたのです。
しかしカードローンの利息は、一度も経費計上しませんでした。
なぜか?今になって振り返ると、3つの思い込みがあったのでしょう。
「消費者金融の借金は別物」という思い込み
銀行からの借入は「事業資金」、カードローンは「個人的な借金」・・
頭の中でそう分けていたのかもしれません。
消費者金融からの借金は、事業とは別の世界の話だという思い込みがありました。
でもそれは間違いでした。
事業のために使った資金の利息であれば、どこから借りたかは関係ありません。
借り入れと返済の記録さえ提示できれば、経費として計上できるのです。
恥ずかしさが、正しい判断を妨げた
もう一つ、正直に言えば「恥ずかしさ」もありました。
事業資金をカードローンで調達していることを、帳簿に残したくなかったのです。
誰かに見られるわけでもないのに、記録することへの抵抗感があり、
そのうしろめたさが、正しい経費計上を妨げたとも言えます。
それは、言うまでもなく知識の問題ではなく感情の問題です。
ときに感情が正しい判断を妨げることの良い例かもしれません。
事業用口座にない支出は経費にならない?これも思い込みでした
カードローンの返済は個人の口座から引き落とされていて、事業用口座には記録が残りません。
だから「経費として扱えない」という思い込みがありました。
しかしこれも間違い。
事業のために使ったという証明ができれば、口座が事業用でなくても経費計上は可能です。
青色申告を自力でやりながら、この基本的なことすら知らなかったのです。
FPとして今わかること
《カードローン利息を経費計上するための3つのポイント》
- 事業のために借りた資金であること。消費者金融か銀行かは関係ない。
- 借入の目的と使途を記録しておくこと。メモでも構わない。
- 事業用と私用が混在する場合は、按分して計上する。

青色申告を自力でやっていても、こういった細かい判断は迷いやすいものです。
年に一度、税理士や会計事務所に相談するだけでも、見落としを防げる可能性があります。費用以上の節税効果が得られることも少なくありません。
会計事務所に頼んでいれば、違う結果になったかもしれない
当時、申告を会計事務所に依頼することも考えましたが、費用を惜しんで自力でやり続けました。
今思えば、その判断が間違っていたのかもしれません。プロに任せていれば、カードローンの利息計上も、他の見落としも、指摘してもらえたかもしれないからです。
「費用を節約した」つもりが、結果的にもっと大きな損をしていた可能性があります。
これも「知らなかっただけ」では済まない、判断ミスの一つだったといえます。
飲食店が潰れる前に知っておくべき、資金繰りの話
カードローンより先に当たるべき場所

人は追い詰められると、目の前の「手軽さ」に飛びついてしまうものです。
でも自営業者には、カードローンより条件の良い選択肢があります。知っているかどうかだけの違いです。
日本政策金融公庫とセーフティネット貸付
日本政策金融公庫は、個人事業主・小規模事業者向けの融資制度が充実しています。
金利はカードローンの数分の一。申し込みに時間はかかりますが、
「困る前に相談する」習慣をつければ、緊急時でも間に合う可能性は高くなります。

銀行融資の手続きは確かに面倒です。でも私自身、カードローンの金利の怖さを経験してからは銀行に相談するようにしました。手間と時間はかかる。でもトータルで見れば、圧倒的に賢い選択です。
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この時期の失敗談は他にも書いています。
合わせて読んでいただけると、
私がどれだけ「知らなかっただけ」で
損をしてきたかが伝わると思います。
「国民年金を放置した話」 →自営業15年、年金を放置した私の後悔と、そこからの逆転策
「保険に20年払い続けた話」→勧められるままに入った貯蓄型保険の正体。20年後に気づいた保険会社の利益構造
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高金利で膨らみかけていたカードローンの借金を私が返済できたのは、ただ運が良かっただけです。実力でも、計画でもありません。
同じ境遇の人に、同じ綱渡りをしてほしくない。
今でも、カードローンのCMを頻繁にテレビで目にします。画面の中の人物のキャラクターに惹きつけられ、明るい笑顔で「かんたん」「すぐ借りられる」と語りかけてきます。
「借りるのは普通のこと」と思ってしまうのも無理はありません。
「ご利用は計画的に」
「金利は●●%~●●%」
そんなことは目に入らず、
「30日間金利0%」というような甘い言葉に誘われてしまうでしょう。
あの頃の無人契約機が醸し出していた「手軽さ」と何も変わっていません。形を変えて、同じ入口が今もそこにある。そのことが、私はとても怖いのです。
私がはまった「事業資金をカードローンで」という愚かな行為。
金利の怖さや人間の弱さ知っていれば、あの選択はしませんでした。
だから、今日この話を書きました。
ちょっと懐かしいカードの話➡1980年代DCブランドブームと消費の罠!還暦世代の借金地獄の入り口


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