今回の記事は番外編・・自営業者も会社員も主婦も学生も、誰もが知るべきお金の基本です。
多重債務・借金地獄・自己破産・・・そんな状況に陥らないために、簡単に考えてはいけない「クレジット」のお話です。
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彼女はひたすらに走り続けている。
日々ハードな仕事をこなし、自己を磨き、際限なく押し寄せる物欲に抗い・・といいたいところだが、その点だけはいつも敗北という結果に。
その敗北という結果のそのまた結果、収支は常に赤字。
それでもなぜか生活は成り立っている。
クレジットカード、カードローン、分割払い、リボ払い・・。
足りなければ借りればいい。大きな買い物は少しずつ払えばいい。
そんな世間の風潮が彼女の後ろざさえなのだ。
でも・・何かがおかしい。
少しずつでも払っていけばいずれは完済するのが借金のはず。
しかし、
毎月毎月かなりの金額を返済している。なのに減らない。
支払い残高が減らない。
私がそんな彼女に出会ったのはコンビニのATMの前だった。
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コンビニのATMから出てきた明細書を見ながら怪訝な表情のひとりの女性。
彼女の名は、竹藤麗子(タケフジレイコ)
管理栄養士として病院に勤務する56歳のキャリアウーマンである。
若い頃はもちろん、40代になってからも何度か結婚の機会はあったが、仕事との折り合いをつけられず、今まで独身をとおしている。
学生の頃からの浪費グセは50代の今になってもおさまらず、独身の自由さから物欲のおもむくままに服やアクセサリーにお金をかけている
その結果陥っている「減らない借金」という自分の経済事情に今、ATMの前で佇んでいる。

どうしてかしら?もう何度も返済してるのに残高がほとんど減らないってどういうこと?
その時、私はATMの隣のコピー機のところにいた。

あの、すみませんが、コピーしたものが出てこないのですが故障ですかね?

えっ?あ、えーと、これじゃないですか?

あ、これですこれです!こんな場所に出てくるなんて思いませんでした。最近のこの手の機械は構造がよくわかりませんね。複雑すぎて操作も難しい。昔の機械はもっと単純でした。

あ、はい・・確かにそうですね。でもわからなかったら店員さんに聞けば丁寧に教えてくれますよ。恥ずかしがることないですから。

なるほど、そのとおりですね。助かりました。・・ところであなたも何かお困りだったのでは?そのATMの前でだいぶ考え込まれていたご様子で・・、店員さんお呼びしましょうか?

いえ、私は大丈夫です。

困ったときは恥ずかしがらずに店員さんを呼ばれたほうが・・

だから大丈夫ですって!これは店員さんを呼んでどうにかなることではありませんから。

はぁ、これは失礼しました。余計なお世話でした。

あ、ごめんなさい、ついキツイ言い方してしまって・・でもほんとに大丈夫ですから。

でしたらいいのですが・・ただ、深刻な悩みを抱えている人は何となくわかるんです。職業柄というか何といか・・。

職業柄・・というと?
私は名刺入れを取り出して1枚差し出した。
申し遅れました。私はファイナンシャルプランナーの、しば・はまおと申します。

ファイナンシャル・・あー、保険屋さんですか。

んー、まあ保険なんかも関係ありますが他にもいろいろと。お金に関することならなんでも相談にのるのが私の仕事です。

なんでも・・ですか?

はい、家計の管理や資金計画、資産運用に相続の問題なども扱います。あと借金の悩みなんかの相談も多いですね。

借金・・そういうことにも詳しいんですか?なるほど・・
彼女は一瞬考え込んだ。

はい・・あ、もしかして借金のことでお悩みですか?

え?あ、いえいえ、私のは借金ではなくてクレジットカードの支払いのことですから。

クレジット・・それも実質的には借金と同じです。

え?どういうことですか?
私はカバン中のファイルから1枚の用紙を取り出した。
《クレジットカードの仕組み・超基本》
あなたがお店のレジでカードを出す
(この時お店はカード会社がお金を払ってくれるか確認する)
↓
カード会社があなたの代わりにお店にお金を払う
(つまりこの時あなたはカード会社から一旦お金を借りる)
↓
約束した期日にあなたの口座からお金が引き落とされることが決まる
(つまりこの間あなたはカード会社から借金をしている)

ごく簡単にいえばこういう仕組みです。

なるほど・・まあ借金と言われればそうね。

この流れが瞬間的に行われるのです。まあこんなスピードになったのは最近ですがね。昔はもっと時間がかかりました。

そういえばそうですね。なんか大げさな機械にカード挟んでガッチャンとかやってましたっけ。懐かしいですね・・それはそうと、クレジット払いが借金だとしても別に悪いものではないでしょう?キャッシュレスの時代だし。

たしかにクレジットカードは大変便利なものです。財布に現金がなくても買い物ができるのですから。でもそれが逆にトラブルのもとになることもあるのです。

トラブルというと?

自分の収入以上に使い過ぎてしまうことです。一番深刻なのは多重債務。カードで買い物したお金が払えず、そのために借金をするというパターンです。借金を借金で返すというのは最悪の形です。

なるほど・・あ、でもそうならないために分割払いやリボ払いがあるじゃないですか。一度に払うしかなければその方が大変になって借金しなきゃならなくなるわけでしょう?サラ金とかから。

そこです。トラブルを生むいちばんの原因はその分割払いやリボ払いという返済方法なんです。

えっ?どうしてですか?とりあえず一度に支払う金額を少なくできれば借金なんかしなくて済むじゃないですか。

その辺を誤解されている方が実に多い。分割払いやリボ払いというのは消費者金融からお金を借りているのと同じことなのです。

えー?どういう意味ですか?
私はファイルから別の用紙を取り出した。
《クレジットカード・分割、リボ払い手数料について》
【分割払い】
あらかじめ支払回数を決めておく方法です。3回以上の分割払いには手数料がかかります。分割回数が多くなるごとに手数料率は上がります。
一般的な手数料率は、回数に応じて12%~18%程度です。
【リボ払い】
あらかじめ一回の支払金額を決めておく方法です。支払い残額が多いほど利息の額が多くなります。
一般的な手数料率は、15%程度です。

この手数料というのはつまり利息のことです。そしてこの利率は一般的な消費者金融会社からお金を借りた場合とほぼ同じです。クレジットカードの支払いは2回払いまでは手数料、ようするに利息は無しですが、3回払いからは利息が発生します。つまり・・

なるほど分かりました。クレジットカードの支払いを分割とかリボにするのってサラ金からお金を借りてるのと同じということですね。でもほとんどの人はそんな自覚はない。

お察しがいい。あなたはとても賢い方ですね。

まあそんな・・確かに子供のころからずっと成績は良かったですけどね。

でしょうね。ではそんな優等生のあなたに質問ですが・・、支払いを先延ばしにして毎月の支払いが楽になった時、人間はどうなると思いますか?

んー、たぶん、安心してしまってまた使い過ぎちゃう・・かな?また先に延ばせばいいやって感じで。

なかなか鋭い。ほとんどの人はそうなりますね。しかしそれは永遠には続かないのです。なぜかというと・・

あ、限度額ですね。利用限度額になったらそのカードで買い物はできない。

ご名答!カードが使えないから現金で買い物をするしかなくなる。支払いの先延ばし癖がついてしまった家計が一気に苦しくなる瞬間です。そしてその先に待ち受けているのがカードローンというものです。私たちが若い頃の言葉で言えばサラ金ですね。この手のカードは比較的審査が甘いので、大抵の人は簡単に作れてしまう。

クレジットカードの支払いに加えてカードローンの返済も始まるのね。

そういうことです。もしクレジットカードを複数枚持っていればさらに先延ばしができるわけですが・・

結局はいずれ同じことが起きる。そして行き詰った時の金額は恐ろしいものになる。

・・これは驚いた。あなたはホントにお察しがいい。さすが優等生なだけはある。

いえ・・違うんです。察しがいいとかではなくて・・それ、まさに今の私ですから。
彼女はそう言いうと大きなため息をついた。

あー、そういうことでしたか。優秀なあなたでもお金のことについては劣等生だったということでしょうな。
「劣等生」という言葉とは無縁の人生だった。
レイコは、子供の頃から成績も良く、何事もそつなくこなしてきた。
親や先生から褒められるのが嬉しくて、努力も苦ではなかった。これといった挫折もなく大学を卒業して栄養士になり、職場でも認められ、順調に社会人としてのステップを踏んできた。

だって・・学校ではこんなこと教えてくれないですもの。

確かに。今では学校の授業でもやっと金融教育というのが取り入れられてきたようですが、私たちが子供の頃はそんなことはありませんでしたからね。

そうでした。子供がお金の話をすること自体が悪いことのような感じで、借金のことなんて誰も教えてくれませんでした。

教えようにもそのころの大人自体に知識が無かったわけですから。学校で教えない。親も教えられない。そして自分が大変なことになっても、その正体がよくわからない。なんとなく切ない感じがしますね。

ホントですね・・
彼女はまだ何か言いたそうな感じでしたが、結局コンビニでの彼女との会話はここまででした。
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自分の弱い部分やダメなところと正面から向き合うのはとても難しい。
「自分は間違っていない」「私は他の人間より優れている」
そんな自信家にとっては、ミスを認め、自分の愚かさを受け入れるのは至難の業なのです。
そんなレイコの中で起きた明らかな変化。
それはとても小さくて、しかも心の奥の方での出来事だったせいか、彼女自身もその正体が何なのか分かってはいませんでした。
たしかに独身生活は自由ではありました。休日は気ままにショッピングに出かけ、ブランドのバッグや服を買うと気分が晴れた。
新しい服やバッグを褒められるのはとても気持ちがよく、自尊心が満たされる。
しかし、気づけばクレジットカードの引き落とし額は増える一方。リボ払いを繰り返すうちに、残高は雪だるま式に膨らんでいったのです。

節約しなくちゃダメなのは分かってるけど、買い物くらいしか楽しみないし・・
職場でのストレスや孤独感を紛らわせるために、またブランドショップのショーウィンドウに足を止めてしまう。
借金の総額を正確に把握するのが怖くて、明細書をきちんと確認できない。そして、月末になるたびに口座残高が足りず、ついにカードローンにまで頼ることになっていた。
コンビニで私と話をした数日後、勤務先の病院で、職員向けに外部講師による『ライフプランとマネー管理』というセミナーが開かれることになった。
職場の福利厚生の一環で定期的に行われるこの手のセミナーをレイコは今までスルーしてきたが、今回は違った。
セミナーの内容はレイコの背中を押す決め手になる。
『ライフプランとマネー管理』セミナー
「皆さん、自分のお金の流れをきちんと把握できていますか? 収入と支出、そして借入があるなら返済計画。それらを『見える化』することが第一歩です」
「カードローンやリボ払いの危険性を知っていますか?『利息が膨らむ仕組み』を理解していないと、気づけば元本の何倍も払うことになるんです」
「お金は感情と深く結びついています。『ストレスや孤独』を埋めるための買い物は、根本的な解決にはなりません」
そこで語られるすべてが、まさに自分のことだったのです。
セミナーの後、レイコは資料の最後に書かれていたFPの個別相談の案内に目を留めていた。

個別相談か・・。私に必要なのは分かってるけど、申し込みは総務課を通して・・か。職場の人に知られるのはイヤだな。
自分の置かれた深刻な状況は理解していたが、彼女はまだプライドの壁を越えられずにいた。
そんな時、私のことを思い出し連絡をくれたのでした。

実はあの後いろいろ考えていて、自分の今の・・なんていうか、お金の事情のことを。
レイコは職場で参加したセミナーのことや、その内容に危機感を覚えたことを私に話した。そして職場の関係もあり、そのFPの個別相談が受けづらいことも。

今私は自分の愚かさを実感しているんです。私がこの状況から抜け出すにはどうしたらいいでしょうか?

そのあたりのことはケースバイケースだと思います。ただ、あなたの場合は既に答えが出ています。あの時に伺ったお話からすると、相当な意識改革が必要なところまで来ているでしょう。

あー、やはりそうですよね。

ご自分でもお気づきとは思いますが、あなたは立派な多重債務者です。この状態から生活を立て直すためには、いくつかのステップを確実に踏んでいかなければなりません。
《多重債務から抜け出すステップ》
ステップ1「返済計画」
借金の全容をはっきりした数字で把握し、実行可能な返済計画を立てる。
低金利のローンへの借り換えや、場合によっては法的な整理も選択肢に入れる。ステップ2「支出の把握」
家計簿をつけ、支出を見える化し、固定費を中心に無駄な出費を削る。ステップ3「生活の再構築」
外食を減らし自炊中心にしたり、ストレス発散のための買い物はやめ、身体と精神の両面から暮らし方を改善させる。ステップ4「資産形成」
借金が完済したら、その後は資産形成の段階に入る。
少額からでも投資を始めるなどして、退職後の暮らしに備える。

はい。確かに厳しい道のりですね。弱音を吐くようで情けないですけど・・

情けないことはありません。あなたは優秀な方ですから、知識を得るだけなら決して難しくはないでしょう。しかし実際に行動するにはプライドを捨てる必要があります。今の状況を招いた原因のひとつは、おそらくプライドの高さではないでしょうか。

プライド・・・そういわれればそうかもしれません。でも私、どうしても今の状態を変えたいんです!そのためには私自身が変わらなければなりませんよね。

それは素晴らしい覚悟です。
不安は山ほどあった。
しかしその不安を吹き飛ばすのに十分な決意がレイコにはすでにあった。

どんなことをしてでもこのピンチを乗り越えて人生を変えるのよ!



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