介護はだれにとっても他人事ではありません。
いずれは自分も介護される身になるわけですが、還暦世代の多くの人がまず直面するのが「親の介護」です。
そして、親の介護が現実的になったときにまず悩んでしまうポイントが、
「どんな施設があるのか?」「受けられるサービスはどんなものなのか?」という問題です。

介護施設と一口にいっても、特別養護老人ホーム、老健、有料老人ホーム、グループホーム、小規模多機能型居宅介護などさまざまな種類があり、名前も規模もいろいろで混乱してしまうのが普通です。
この記事では、介護施設の種類やそれぞれの特徴や費用の目安、施設選びのポイントをわかりやすく整理しました。
親の介護が差し迫る今だからこそ、介護されるご本人はもちろんのこと、家族にとっても最適な施設を選ぶために役立ててください。
介護施設は大きく2種類に分かれる
まず知っておきたいのが、介護施設は大きく「公的施設」と「民間施設」のふたつに分類されることです。
公的施設
自治体や社会福祉法人などが運営する施設。
入居条件や費用が公的に定められていて、比較的安価に利用できるのが特徴です。
代表的なものに「特別養護老人ホーム(特養)」「介護老人保健施設(老健)」「介護医療院」などがあります。
民間施設
民間企業が運営する介護施設。
サービス内容や設備、費用は施設によってさまざまですが、当然、費用が高いほど質の高いサービスが受けられます。
代表的なものに「有料老人ホーム」「グループホーム」「小規模多機能型居宅介護」などがあります。
代表的な介護施設の種類と特徴
まずは施設の特徴を整理してから、それぞれについて詳しく見ていきましょう。
施設名 | 特徴 | 入居対象 | 費用の目安 |
---|---|---|---|
特別養護老人ホーム(特養) | 常時介護が必要な方向け。終身利用が可能。生活全般の介護と医療支援もある。 | 原則として要介護3以上 | 月額8〜15万円程度 |
介護老人保健施設(老健) | リハビリ中心。自宅復帰が目的。医師・看護師常駐している。 | 要介護1以上 | 月額7〜13万円程度 |
介護医療院 | 医療と介護の両面サポート。疾患の状態により制限がある。 | 要介護1以上 | 月額9〜14万円程度 |
有料老人ホーム | 生活支援・介護・医療の体制が施設によって大きく異なる。 | 自立〜要介護まで幅広い | 月額15〜30万円+入居一時金 |
グループホーム | 認知症の方が少人数で家庭的な環境で共同生活できる。 | 要支援2〜要介護で認知症の方 | 月額12〜20万円程度 |
小規模多機能型居宅介護 | 通い・訪問・泊まりを組み合わせた地域密着型。サービスに柔軟性がある。 | 要介護1以上(状況により要支援も可) | 月額5〜15万円程度 |

費用については平均的な数字です。また、公的施設に関しては、世帯の収入などの要件によって費用の軽減措置があります。
各施設のメリット・デメリット
介護を受ける本人はもちろん、ご家族としても介護施設に求めるものはさまざまです。

在宅介護で足りない部分を助けてもらうのか?それとも全面的に介護をお任せしたいのか?

いずれは自宅に復帰することを目指すのか?それとも最後まで面倒を見てもらうのか?
そもそも要介護度や負担できる費用の問題など、前提条件によっても選択肢が限られてしまうこともあるのです。

いずれにしても、それぞれの施設の特徴を確認してメリットとデメリットを理解したうえで、選択が可能な中から施設を選ぶ必要があります。
特別養護老人ホーム(特養)
- 終身で利用ができるので安心感がある。
- 費用が比較的安価なので資金面での負担や不安が少ない。
- 入居待機者多く、申し込みから入居まで数年待ちになることもある。
介護老人保健施設(老健)
- リハビリ中心のケアが受けられるので自宅復帰を目指せる。
- 医師や看護師が常駐していて医療体制も整備されているので安心感がある。
- 原則3〜6ヶ月の短期入所が前提なので、その後の準備が必要。
介護医療院
- 医療と介護の両方のケアを受けられるので、体調面での不安が少ない。
- 終身利用も可能なので安心感がある。
- 医療が必要な方が対象になるため、入居できない場合も多い。
有料老人ホーム
- 一般的に設備やサービスの充実度が高く、快適な生活が期待できる。
- 医療対応型もあり選択肢が広く、条件に合った施設が選べる。
- 費用が高額で、入居一時金が数百万円〜数千万円のケースもある。
グループホーム
- 認知症の方に特化していて、家庭的な雰囲気の中で生活できる。
- 少人数制でスタッフの目が行き届くので安心感がある。
- 入居条件として認知症診断+要支援2以上が必要になる。
小規模多機能型居宅介護
- 通い・訪問・泊まりを自由に組み合わせた柔軟な対応をしてくれる。
- 住み慣れた自宅での生活を続けながら介護を受けることができる。
- 小規模ならではの家庭的な雰囲気があり安心感が高い。
- 泊まりの人数に限りがあり、希望どおりに泊まれないことも多い。
介護施設を選ぶときのポイント
- 要介護度・医療の必要性を確認する
要支援・要介護認定の区分を確認し、医療的なケアがどの程度必要かを把握しましょう。要介護度によって利用できる施設が限定されることもあります。 - 費用と支払い方法を把握する
入居一時金の有無や月額費用を確認し、追加費用などの面もチェックしておきましょう。 - 本人の希望を的確に理解する
ご本人の性格や習慣なども考慮して、本当に希望していることを理解しましょう。遠慮などの気持ちから言い出せないこともあるはずです。 - 家族の面会・アクセスのしやすさ
環境や生活パターンが変わって不安な時、家族に会えることは大きな楽しみのひとつです。家族の生活圏から近い施設が理想です。 - 施設の雰囲気・スタッフ対応
スタッフの対応や施設の雰囲気、利用者の表情など、直接確認して初めてわかることもあります。できれば見学や体験入居で事前に確認した方が後悔がありません。
まとめ
介護施設は種類が多く、名前もサービス内容もバラバラなので混乱しがちです。
まずは「公的施設」と「民間施設」に分類してそれぞれの特徴を理解しましょう。
次に、ご本人の要介護度や医療ニーズを把握して、必要なサービスを受けられる施設を確認します。

介護度や医療のニーズによっては利用できる施設が限定される場合もあり、自動的に選択肢が絞られることになります。
可能な選択肢の中で、ご本人の希望の暮らし方や費用、家族の負担などを整理しながらさらに候補を絞ります。
とはいえ、実際に施設を決めるとなると迷いも多く、簡単には決められないこともあります。
最近では小規模多機能型居宅介護のように、自宅での生活を続けながら柔軟に利用できるサービスも増えています。

選択肢を一つに決めず、まずはこういった柔軟性のある施設でサービスを体験してみるのもひとつの方法です。
経済的に余裕があれば、費用が高額な民間の有料老人ホームへの入居がご本人にとっても家族にとっても理想的でしょう。しかしそれが可能な人はそれほど多くはありません。
現実的には「費用」が重要な要素になってしまうのは仕方がないことでしょう。

しかしその中で選べる施設を選ぶにあたっても、労力を惜しまずに時間をかけて、ご本人と家族にとって最適な介護のかたちを見つけることが大切だと思います。
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