1980年代のデザイナーズブランドブーム!金利を敵に回す生活は、あの赤いカードから始まっていた。

【ファイナンシャルプランナーが解説】還暦世代のためのお金の知識

時は1980年代。憶えているだろうか?

空前のデザイナーズブランドブームを。

老いも若きも、男も女も・・というとやや大げさかもしれないが、学生も社会人も、職業や性別を問わず、そして都心や地方といった場所を限ることもなく、多くの人が高価なブランドショップに日参したあの日々。

学生たちの中には、買った服を入れてくれるブランドのロゴ入りの袋をカバン代わりに、教科書なんかを入れ学校に行った者もいたという。

冷静になればなんともダサい話ではあるが、めったに買えないブランドショップの袋はそれくらい価値のあるものだったのかもしれない。

しかしこの話は、そんなある意味ではほほえましいエピソードに終わるものではない。

その後の彼らの長い人生に暗い影を落とす原因の一つとなる、極めて深刻なものなのです

貧乏学生に手を差し伸べたのは神か悪魔か?

日本が好景気に沸いていたあの頃、世の中にはそれなりに稼いでいた人も多くいたでしょう。とはいえ、今も昔も変わらないのが学生たちの経済状況かもしれない。

令和の現在、学生たちが置かれている状況に比べれば少しはましだったかもしれません。

しかしながら、アルバイトで稼ごうにも時間は限られ、時給もだいぶ低かった。地方から都心の学校に進んだ子供を持つ親が必死の思いで仕送りをする姿は、今も昔も変わらない。

そんななかで起こったデザイナーズブランドブーム。

考えてもみましょう。お金に余裕のない学生に5万円のスーツが買えるわけはない。喉から手が出るほど欲しい服ばかりだが、あきらめるしかないのか・・

クレジットカードそこへ差し伸べられた神様の手!それが丸井の赤いカード!

「支払いは12回の分割!・・これならなんとか払える」

多くの学生がこぞってカードを作り欲しい服を手に入れ、満足感に浸ったのだ。

しかし「お金の知識」の無さが招く恐ろしい事態はこの時すでに起き始めていた。

FPハマヲ
FPハマヲ

本来分割払いとは、個人の信用と引き換えに得られる権利のはず。信用とはほかならぬ「収入」です。そして本人に信用がない場合、それなりの保証人が必要となるものなのだが・・

なぜか気軽に入手できた魔法のようなカードでの買い物がスタートし、5万円のスーツは手に入れた。

だが誘惑は終わらない。高いスーツを買ったなら、それにあった靴も欲しいのだ。一点だけ豪華などという状態はむしろかっこ悪い。

物欲には抗えず、服の数に比例して増える月々の支払いは気づけば数万円。

両親が苦労して送ってくれた仕送りの大半はローンの支払いに消え、生活費は必死にアルバイトで稼ぐ。毎月そんなことの繰り返し。

そこまでならまだよかった。

そんな暮らしでお金に余裕などあるはずもなく、飲み会の金が無い。デートの金がない。

そして手を出したのがキャッシング。

魔法のカードには、新たな魔力が与えられ現金を手に入れることができたのだ。

FPハマヲ
FPハマヲ

その時に金利のことを考えた人が果たしていただろうか?時代背景的に30%近かったと思われるが、そんなことまったく気にせずにお金を借りていた人がほとんどでしょう。

ひどい時には、借りたお金で服のローンを払ったというケースも少なくはない。

借金の返済を借金で・・というまさに地獄のループの始まりである。

そうなることが初めから計画されていたのかどうかは分かりません。

ただ言えることは、事の始まりは、否定しようのない至極まっとうで親切な提案だったということでしょう。

「お金がたまるのを待っていたら、いつまでたっても買えない」
「どうせ買うなら今すぐ手に入れて、ゆっくり払えばいい」

そんなごもっともな甘いお誘いを「お金の知識のない」若者が否定できるわけもなく、ありがたいお言葉として都合よく受け取ったのです。

手数料という名の金利との付き合いはまだ続く?

丸井さんを非難するつもりはまったくありません。貧乏学生が家賃より高いスーツを着られたのです。

そう、分不相応な高い服に身を包んだ者たちはあの頃とっても幸せだったのです。

何にお金をかけるかは自由。

食費を節約してブランド品をもってもいいし、4畳半ひと間、風呂無し共同トイレのアパート・・今どきそんなものは存在しないでしょうが、家賃を抑えて高級車に乗ったっていいのです。

しかし冷静になって考えてみなければなりません。あのとき自分は本当にあの服が欲しかったのか?自分の価値観に照らしてじっくり考えたのか?

FPハマヲ
FPハマヲ

何回に分割したところで、そのお金は払うのです。

しかも、手数料という名の金利をのせて

衝動的に買ってはみたもののほとんど着ない服もたくさんあったかも知れません。もし必死で稼いで時間をかけてためたお金を握りしめて買いに行ったとしたら、違う選択をした可能性は十分あります。

遥か昔のこと、今さらそんなこと考えたって・・とも言っていられないのです。

なぜなら、今この瞬間も私たちの身の回りには、あのときの赤いカードと同じ魅力的な誘いがあふれているからです。

30年以上たった今も狙われているのは還暦世代?

デザイナーズブランドブーム。それは今となってはひとつの昔話に過ぎません。しかし今、私たちの周りにはそれとよく似た誘惑があふれています。

「あのハイブランドがあなたのものに、月々のお支払いはわずか○○千円」
「急な出費でピンチの時、このカードがあれば」
「リボ払いなら月々の支払いを一定に抑えられます!」

分割払いは便利なもの。今しか買えないものは確かにあります。でも、いったん立ち止まってじっくり考えた方がいいのではないでしょうか。

それは本当に価値のあるものなのか?
本当に今しか買えないのか?
そもそも自分はそんなにそれが欲しいのか?

あの時からすでに30年以上が経過しましたが、その間、「お金の知識」の無さによる失敗を続けている人も多いはずです。

ここ数年、金融教育の必要性が叫ばれ、情報の多様化で世の中の負の側面に触れる機会も増えました。

FPハマヲ
FPハマヲ

若者の金融リテラシーが確実に進歩している中、「お金の劣等生」として取り残され、危険にさらされているのは、あのデザイナーズブランドブームに踊らされた世代、それはまさにいま、還暦周辺にいる人たちなのかもしれません。

 

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