年齢を重ねるにしたがって失ってしまうのが「夢や希望」、増していくのが「あきらめや手遅れ感」・・・
否定したい気持ちはもちろんある。でも、ん~ん、確かに・・。
というのが正直なところではないでしょうか?
私たち還暦世代が、あきらめや手遅れ感を振り払って、これからの人生を活力的に生きるためには、大きな意識改革が必要なのかもしれません。
この記事では、人生100年時代を語ったベストセラー『ライフシフト』の第5章「新しいシナリオ」の内容を解説しながら、働き方の概念を変えるべき理由についてまとめています。
長寿化が働き方を大きく変える
『ライフシフト』では、長寿化にともなう社会の変化のひとつとして、働き方の劇的な変化を挙げています。
その変化を象徴する言葉が「マルチステージ」
《マルチステージの考え方》
従来の「教育を受ける→働く→引退後」という「3ステージ」の人生モデルから、それぞれのステージの境界があいまいになり複合的にかかわりあう「マルチステージ」というものに変化する。
ステージを年齢だけで区切らず、学び直し・仕事・趣味・社会貢献などを行き来しながら、多様なステージを経験する生き方を意味します。
人生100年時代においては、引退年齢が70歳~80歳になって働く期間が長くなることで、働き方も生き方も柔軟に組み替えることが求められるという考えです。

このマルチステージという新しい考え方を受け入れるには、「新しい働き方」についても柔軟に受け入れる必要があるわけです。
その新しい働き方のひとつが「エクスプローラー(探検者)」というもの。

「エクスプローラー(探検者)」とは自分を縛るものをなるべく持たずに身軽に旅をするイメージです。
と言われても、実際にそんな働き方が可能なのでしょうか?
エクスプローラー的な働き方
今までの常識からすると、この「エクスプローラー」は特定の人が限られた期間にだけ実行できる特別なことのように思えます。
自分の人生にそれを取り入れるにはどうしたらいいのでしょうか?
ここで、『ライフシフト』の中で具体例として挙げている人物のシナリオを見てみましょう。
50代の彼は、想定される退職金や現在の貯蓄額、受給できる見込みの年金の金額について考えていた。
その結果、このまま今の職場で今の仕事を続けていった場合の将来の姿が現実的にイメージできてしまう。
このままでは定年の年齢で引退などできるはずもなく、さらに何年も働かなければならないことが明確になり、何の変化もせずにこのままでいることに喫感を覚えることになる。
そこで彼は、余暇の時間と自らの費用を使いスキルアップのためのプログラムに参加しする。
その自分のスキルへの投資によって条件の良い企業への転職に成功し、仕事上での実績を積みながら、さらなる研修プログラムへの参加を実現させる。
63歳でその会社を退職し、それまでに築いた人的なネットワークによってフリーの立場でさまざまなプロジェクトに参加することができた。
70代の後半になった現在でも仕事の依頼は絶えない。
このシナリオの内容を見てみると、「気軽に旅する」というイメージからはだいぶ離れていると感じます。

おそらくこのストーリーは「エクスプローラー的な感覚」の重要性について述べられていると解釈したほうが受け入れやすいでしょう。
人生100年時代といわれる長寿化の中で持つべきその感覚とは、

さまざまな選択肢を見つけ、その選択肢を残し、人生の道筋を決めないでおく。そして、柔軟性や遊び心、未知のものへの前向きな姿勢をもって積極的に行動する。
つまり、寿命が長くなるということは現状を甘んじて受け入れるのではなく、選択肢を持っておくことの重要性が高くなるということなのです。
還暦世代に向けたメッセージ
「教育を受ける→働く→引退後」という3ステージの時代には、このエクスプローラー的な時間は若者の特権のように思われていました。
しかし著者は「何歳でもエクスプローラーになれる」と言っています。
そして高齢の世代に向けたこんなメッセージもあります。

エクスプローラーの日々は、見違えるほど若さを取り戻せる機会になりうる。(中略)冒険に乗り出せば、現在のライフスタイルを問い直し、新しい選択肢を見出すことを通じて、活力の回復が大きく後押しされる。
そしてさらに、このエクスプローラーの存在は、年齢によって人々を隔離する仕組みを取り除く役割を持つといいます。

さまざまな世代が一緒に活動し、混ざりやすくなれば、年齢に関する固定観念は消えていく。それにより、誰もが若者の柔軟性と好奇心、そして高齢者の知識と洞察力の両方を得られるようになる。
私たち還暦世代は、今までいろんなことを見聞きしながら「知識」を得て、そして様々なことを経験する中で「洞察力」のようなものも身に着けました。
そこに、若者のような柔軟性や好奇心が合わされば、大きな力になりそうに思います。
必要なのは家族の理解と協省
このエクスプローラー的な働き方はとても魅力的で可能性を感じますが、実際には難しい面も多いでしょう。
まず、自分のスキルアップに投資するためには、仕事以外の時間の使い方を大きく変えなければなりません。
それは夫婦関係や今までの家庭のルールにも大きく影響するでしょう。
しかも転職が必ず成功するとも限らず、家計に影響を及ぼす可能性も高くなります。

時間とお金の投資にはパートナーの協力が不可欠ですから、慎重に話し合い、お互いにとって最良と思える選択をする必要があります。
そう考えると、エクスプローラー的な働き方を目指す場合でも、リスクを最小限に抑える必要はあるでしょう。

たとえば、本業以外の時間で副業を始めるなど、リスクの少ない形で次のステップの準備をするのもひとつの方法です。
それは、パートタイムでどこかに雇われる形でもいいし、あるいは、小資本で自分のビジネスを始めるという方法もあります。
真剣に取り組めば、いずれフルタイムで今よりも待遇のいい仕事の誘いが来るかも知れないし、自分のビジネスが軌道に乗る可能性だってあるのです。
未来を変えるために積極的に行動する
大切なことは、リスクの大小にかかわらず、良い結果は偶然や幸運だけでは手に入らないということです。

人間は基本的に行動を通じて学習する生き物であり、新しいステージは、実際に行動し、その行動について自己分析をする絶好の機会になる。
つまり、未知のものを恐れずに新しい機会を積極的に切り開こうとする姿勢がなければいけないということです。
そうでなければ、どんな良い結果も得られず、今も未来も変わることはないということなのでしょう。

私たちはみな、子供のころから新しい環境を受け入れ続けてきました。なかば強制的に、それまでとは違う集団に組み込まれたり、必要にせまられ苦心して他者との関係を構築したりもしました。
振り返ってみると、その新しい環境や他社とのかかわりの中で得たものは多く、成長のきっかけになったことも多いのではないでしょうか?
しかし歳を重ねるにつれてそういう機会は少なくなり、同時に学習の機会も失われてきたように思います。
まとめ
長寿化による働き方の変化と、それにともなって生まれる新しい選択肢のひとつ「エクスプローラー」についてみてきました。
若者の特権のように思える自由な働き方とは、その豊かな好奇心や積極的な行動力という探検家のような精神を意味しているようです。
それは私たち還暦世代、そしてさらに高齢の世代が若さを取り戻し、活力を回復させる原動力にもなるといえます。
人生100年時代をむかえ、私たちは意識を変える必要があるのです。

思春期の特徴を大人になってからも保持し続けることの価値が増す。
エクスプローラー的な働き方を取り入れ、探検者のように生きるには難しい面も多いです。
パートナーの協力を得ることも大切だし、生活資金を確保する必要もあります。
そして何よりも積極的に行動する勇気を持たなければなりません。

しかし、長寿化の負の側面である社会保障制度への不安、劇的な技術革新が生み出す雇用環境の変化などを考えれば、現状のままでいることこそがいちばんのリスクといえるのではないでしょうか。
長生きをリスクではなく恩恵にするためには、私たち還暦世代こそが、この新しい選択肢のひとつである「エクスプローラー」のような生き方を選ぶときなのでしょう。
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