人生100年時代となった今、本来は長寿の祝いであった還暦の意味合いも変わってきたようです。
60代はもちろんのこと、70代や80代になっても現役で働いている人は珍しくありません。

とはいえ、還暦を迎えるような年齢になると、自分が衰え始めていると認めざるを得ないこともあります。
体力や判断力に以前のような自信が持てなくなり、定年退職で社会人としての立場にもひとつの区切りがつけられてしまう。

このままどんどん老いていくのだろうか?これも仕方のないことなのか・・
しかし、老後に備えて十分な蓄えもなく、年金などを含めても生活資金の計画が立てられていない場合はそういうわけにはいかないのです。
シニアの求人の実状や、先細りが予測される社会保障など、明るい未来を予感させるものはほとんどないのです。
そんな中、これからも何らかの手段で収入を確保しなければならない還暦世代にとってのいちばんの不安は、「今の自分に何ができるのか?」ということではないでしょうか。
そこで、定年を迎えるような年齢にあっても現役を続け、活力的に生きるための方法について、人生100年時代の生き方をテーマにしたベストセラー『ライフシフト』の第4章「見えない資産」の内容を解説しながら考えてみましょう。
すでに持っている見えない資産の意味
書籍『ライフシフト』の中で「見えない資産」の例として挙
げられているのが、家族、友人、スキルと知識、健康などです。
これはもちろん素晴らしいものばかりです。
家族がいることで生きる意味を感じたり、友人と過ごす時間が明日への活力を生んだりする。
スキルや知識は仕事や生活に活かされ、健康がすべての基本になることは言うまでもない。

どれもかけがえのない大切なものですが、これを資産と考えたことがあるでしょうか?
家族や友人と過ごすことの幸福感も「見える資産」、つまり「お金」があってこそのものだと感じてしまう。さらに言えば、健康さえも「お金」に左右されてしまうことがあるのが現実なのではないでしょうか。

そんな「見えない資産」に目を向けたところで私たちの不安は解消されないのでは?
そんな風に感じてしまうのも仕方のないことですが、ここでこの『ライフシフト』という本の大きなテーマについて考えてみましょう。

この『ライフシフト』という書籍は、今までがたとえどうであれ、未来の可能性を信じる人が長寿を恩恵とする為に書かれています。
そのなかでこの「見えない資産」はどんな意味を持つか?という点に着目してみましょう。
変化の時代に必要な3つの見えない資産
『ライフシフト』では、見えない資産を3つのカテゴリーに分けて解説しています。
「生産性資産」「活力資産」「変身資産」
この3つは具体的にどんなものなのでしょう。
生産性資産
代表的なものは、何年もかけて身につけてきたスキルと知識です。
今現在もそれが収入を得ることに直結しているし、将来的にもそれが継続していく可能性は大きいでしょう。
ただここで重要なことは、それだけでは十分ではないということなのです。
人生100年という時代、そしてテクノロジーの進化の速さを考えれば、そのスキルと知識の需要が突然なくなってしまっても何の不思議はありません。

つまり私たちは、今あるものに頼るだけではなく、新しいスキルと知識を獲得し続けなければならないということなのです。
そして、予測が難しい未来の雇用においても需要が見込まれるものとして、著者は3つのスキルを挙げています。
《未来の雇用に価値を生む3つのスキル》
- アイディアや創造性・・単純に模倣することが困難
- 共感、モチベーション、励ましなどの繊細な対人関係のスキル・・機械にとって変わられる可能性が低い
- 思考の柔軟性と敏捷性・・あらゆる分野で通用する汎用スキル
この3つのスキルに共通するものが、実践と繰り返しと観察を通じてはじめて獲得できるものだということは、私たち還暦世代にとって朗報です。
活力資産
私たちに幸福感と充実感を持たせ、やる気を掻き立てて前向きにさせるこの資産について、著者は「健康」と「自己再生のコミュニティ」の2つをあげています。
《健康》
人生100年と聞いたとき、苦しそうな老人の姿を思い浮かべることもあるかもしれません。
いろいろな病気を抱え日々の暮らしは苦痛に満ちている。
認知力や判断力が極端に落ちて、周囲の人たちに迷惑をかけながら生きている自分。
あるいは病院のベッドで機械に繋がれ、生きている実感すらない姿。

しかし『ライフシフト』で述べられている100年の人生はそういうものではなく、「長くなった人生の大半を健康に過ごす」ものなのです。
そのためには、食事や睡眠、運動といった誰もが考える健康のための要素に加え、ストレスが重視されます。
ストレスを完全になくすことは不可能ですが、それをうまく管理できなければ、私たちは常に病気の危機にさらされることになるでしょう。
《自己再生のコミュニティ》
これは、長い年月をかけて築かれた感情のこもった強い友情のこと。
長い人生の中でこれを維持し続けるのは難しい。しかしだからこそ価値があるのです。
古くからの友人、仕事上で同じ思いを共有した仲間など、前向きな親しい人たちのネットワークは、私たちの支えとなり、安らぎを与えてくれるのです。
変身資産
テクノロジーの進化などの外的要因によって私たちは変化をせまられる場合もあります。
また、長くなる働く期間の中で、新しい分野への挑戦のために自ら変化を望むこともあるでしょう。
そんな時に必要になる、変化や新しいステージへの移行を可能にする意思と能力を鍛えるためには、次の3つのことが必要だといいます。
《変化の時代に必要な3つのこと》
- 自分についてよく知ること
- 新しい人的ネットワークを築くこと
- 実際に行動すること
●自分についてよく知ること
自らの過去、現在、未来について絶え間なく自分自身に問い続け、同時に他の人の意見に耳を傾けることで、世界と自分との関わり方も変化してきます。
それはまた、変化しながらも自分らしさを保つための助けにもなるのです。
●新しい人的ネットワークを築くこと
変化することや、新しいステージへの移行に必要で有益な情報は、それほど親しくない知人から寄せられることが多いといいます。
あなたの身近な人は、あなたに今のままでいてほしいという思いから、その変身を妨げる場合のほうが多いのです。
●実際に行動すること
変化には不安とリスクがつきもので、時には今までの自分の行動パターンが通用しないような道に踏み出すこともあります。
しかしそれを乗り越えて行動し良い結果がもたらされれば、更なる変化にも積極的になるでしょう。
見えない資産が見える資産に変わる
『ライフシフト』では、働く期間が長くなれば、その途中で雇用環境は大きく変貌するとして、いくつかの予測を立てています。
高齢化による人口構成の変化や地球環境の問題などによって、衰退する産業と成長する産業が現れる。テクノロジーの進化によって、AIがとって代わる職業や、逆に新たに生まれる仕事も出てくる。
と言いながらも、「これはあくまでも予測であって、それを正確に予測するのは不可能だ」ということも同時に言っています。

結局のところ、雇用環境がどう変化するかわからない長寿化時代には、たとえどんな変化が起きても対応できるように、柔軟性をもって、将来に方向転換と再投資を行う覚悟を持っておく必要があるのです。
そして「見えない資産」の価値を端的に示しているのはこの言葉です。
現在はお金に換算できない「無形の資産」が金銭的資産づくりを支える。
雇用環境の変化に対応できるかどうかは、私たちの「収入」に直結してきます。
お金に代表される「見える資産」を手にするためには、優しい家族、素晴らしい友人、様々なスキルと知識、肉体的・精神的な健康などの「見えない資産」へのさらなる投資と丁寧なメンテナンスが必要なのでしょう。
まとめ
生産性資産、活力資産、変身資産の3つの「見えない資産」についてみてきました。
もちろんどれに関しても、自分が今持っているものだけでいいというわけではありません。
還暦世代にとっても、これからの生涯において、新しいスキルや知識、周囲との良い関係を手に入れ、どんな変化にも対応していくという姿勢を保ち続けることが大切なのです。
目に見える資産をほとんど持っていないならなおさら、この見えない資産は貴重な武器だと言えます。
持っていないものを嘆くより、持っているものに目を向けて、それを最大限に活かしていくべきなのでしょう。
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