【退職金】減りゆく退職金!少ないからこそ気になる手取り額は?計算方法を解説。

【ファイナンシャルプランナーが解説】還暦世代のためのお金の知識

伝統的な老後資金の3本柱といえば、貯金・年金・退職金といわれます。

ここ最近は貯金以外の金融資産として投資信託、国債や社債などの債券も重要視されてきました。

国が積極的にNISA枠での資産運用を推奨していることもあり、老後のお金に関する常識も変わっていくかもしれません。

とはいえ、今まさに定年退職を迎える還暦世代にとって、ある程度まとまった金額が入る退職金は大きな関心事であることは間違いありません。

ところが、その退職金の額は年々減り続けていて、老後の暮らしの支えとしての意義は失われつつあるというのです。

この記事では、退職金の現状と、それに大きくかかわっている雇用の形の変化。そして気になる年金の手取り額までをまとめました。

退職金はこの20年で30%減少!

厚生労働省の調査では、日本の退職金は年々減少しています。

大卒者の退職金額の平均値は、2000年頃の 約2,500万円から、2020年の約1,800万円へと推移していて、この20年間でおよそ30%の減少が見られます。

特にリーマンショック後に減少が加速したことなどから、経済状況の影響を強く受けていることがわかりますが、理由はそれだけではなさそうです。

FPハマヲ
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ただ、そもそも退職金の額というのは企業の規模や勤続年数、職種などによって大きな違いがあるので、30%減!と言われてもあまりピンと来ませんね。

とはいえ、全体的な傾向として大幅に減少してきているとなると、誰にとっても嬉しい話ではありません。

どうして退職金がこんなに少なくなってしまったのだろう?長く続く不景気のせい?

それももちろん理由のひとつですが、

そこには働き方の変化や会社というものに対する考え方の変化が大きくかかわっているのです。

雇用の形の変遷が退職金に与える影響

ひとつの会社に長く勤めて最後に大きな額の退職金をもらう。

そんな働き方が主流ではなくなり、今は多くの人が幾度かの転職を経て定年を迎えるようになりました。

その結果、退職金に期待する人も減り、老後の生活の支えとしての意味合いは大きく変わってきたのです。

FPハマヲ
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そうなると企業側としても、大きな退職金を準備するより、成果に見合った報酬が得られる環境を用意するほうが、良い人材を集めるには効果的だということになってきます。

この成果報酬型への移行はなかなか進まないとはいうものの、終身雇用は過去のものになりつつあり、年功序列にもはっきりと変化がみられます

そんな雇用の形の変化の中で、退職金の額もだんだん少なくなってきたのでしょう。

「働かないおじさん」の消滅は近い?

「学歴至上主義はもう終わる!」

「年功序列、終身雇用という日本型の雇用の形はもう古い!」

もう40年近くも前から、すでにそう言われていた気がするけど、あまり変わってないような・・

実際に今でもほとんどの企業は一括で新卒の学生を採用し、その際には当然のように大学名でフィルターをかけているようです。

社員のモチベーションアップには実績によって評価される成果主義的な考え方が必要だという意見は常にあるものの、それが定着した例はとても少ないのは確かです。

FPハマヲ
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1990年代には成果主義を取り入れようという動きが高まった時期もありましたが、なかなかうまくいかなかったといいます。

「定期昇給、勤続年数に応じた役職。会社は一生めんどうを見てくれる」

そんなつもりで入社した人たちが成果主義の給与体系を受け入れるのは簡単ではなく、成果主義への動きはそれほど進まなかったのでしょう。

その結果、いまだに「働かないおじさん」はしっかりと会社に根をおろしているというわけですね。

ところが近年、やや新しい動きが出てきました。

メンバーシップ型雇用からジョブ型雇用へ

2020年、「経営労働政策特別委員会報告」の中で、経団連が日本企業に「ジョブ型」雇用制度の導入を呼びかけました

ジョブ型雇用とは

採用の際に、職務内容、勤務地、勤務時間などの条件を明確に決めて雇用契約を結ぶ形。雇用される側は、その契約内容の範囲内で働くので、部署の異動は無く、決められた業務だけを遂行できればよい。転勤がないかわりに、基本的には昇進や降格もない。

これに対して、今までの日本の一般的な雇用の形をメンバーシップ型といいます。

《メンバーシップ型雇用とは》

新卒で一度に社員を集めて会社が教育をし、人事的な判断で人員を配置していく。部署の移動や転勤もある。希望の職種につけないこともある代わりに、よほどの理由がない限り雇用は保証される。

経団連がこのジョブ型雇用を推奨した目的は優秀な人材の獲得でしょう。

FPハマヲ
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年齢や勤続年数に関係なく、契約通りの職務を成し遂げれば高い報酬が手に入るとなれば、意欲と実力のある優秀な人材が入って企業の業績が上がり、結果的に日本経済全体を押し上げるというわけです。

しかし、この目的に繋がるような変化は実際に起こるでしょうか?

いろいろな障害が生まれることが想像できます。長い間の習慣や意識はそう簡単には変わるものではありません。

ただ、先進国だけでなく世界のほとんどの国がこのジョブ型だという現状から、グローバル化が進む今、その方向に舵を切る以外の選択肢はないと思われます。

退職金の減少が還暦世代にとって朗報?

日本の風土や国民性のようなものから考えて、雇用の形がガラッと変わることはないでしょう。

しかしながら、学歴や勤続年数の関わらず、「何ができるか?」が評価の基準になりつつあり、雇用の形や会社というものに対する意識は、徐々にではあるものの確実に変わってきています

これは古い価値観を持ったまま会社に頼って生きている現役世代にとっては悲報といえます。

「定期昇給、勤続年数に応じた役職。会社は一生めんどうを見てくれる」

その意識を変えない限り、待ち受けているのは厳しい現実だからです。

そういう意味でこの雇用の形の変化は、まだまだ働かなければならない還暦世代にとっては朗報といえるのではないでしょうか?

FPハマヲ
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体力や気力に問題がなく求められるスキルや知識があれば、年齢など関係なく力を発揮する機会が与えられるということになるわけですから。

還暦世代にとって、この雇用の形の変化は決して他人事ではありません。新たな出発のためのプラス要素として活かすべきでしょう。

減っているからこそ気になる退職金の手取り額

これまでの年金額の推移や雇用する側される側の意識の変化を考えると、やがて退職金という制度もなくなることも予想されます。

FPハマヲ
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とはいえ、これまで必死で働いて、今まさに退職の年齢にある還暦世代には、退職金にある程度の期待を寄せている人も多いでしょう。

退職金の額には企業の規模や勤続年数、職種などによって大きな違いがあるので、それぞれ状況は異なります。ただ、誰にも共通の気になるところは、その手取り金額ではないでしょうか?

毎月の給与明細を見てほとんどの人が思っているはずです。

所得税、住民税、健康保険料、年金保険料・・あまりにも負担が多すぎると。しかもボーナスからも容赦なく持っていかれるのです。

もしかしたら退職金からもこの勢いで税金や社会保険料が引かれるのでしょうか?

退職金にかかる税金

退職金には「所得税」と「住民税」が課税されます。しかし、普通の所得税のように課税されるわけではありません。

FPハマヲ
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退職金は「退職所得」という所得区分になります。これは税金の計算をするときに他の収入とは分けて計算される、いわゆる「分離課税」というものです。

累進税率で計算される所得税は収入が多いほど税率が上がります。

退職金を合算して総合課税にすると、退職金の額によってはとんでもない税額になってしまう

そんなことにならないように別に計算をするわけです。

その「退職所得」にかかる所得税の計算式はこうなっています。

《退職所得にかかる所得税》

(退職金収入金額-退職所得控除額)ⅹ2分の1=課税退職所得金額

⇒課税退職所得金額ⅹ退職所得税率=基準退職所得税額

基準退職所得税額+復興特別所得税額=退職金に課税される所得税の合計

FPハマヲ
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実際の税額はこの難解な計算式で算出しなければわかりませんが、結論から言えば勤続年数が短い場合の所得税については基本的に気にしなくていいということになります。

勤続年数が20年以下の場合の所得控除は40万円×勤続年数なので、仮に10年間働いた場合の控除額は400万円になります。

つまり、退職金が400万円以下ならば所得税はかかりません。

残念ながら、勤続10年で400万円以上の退職金が出ることはほとんどありません。

仮に退職金が500万円だとしても、

500万円-400万円=100万円

100万円×2分の1=50万円が課税退職所得金額となり、

50万円×5%(~195万円までの税率・2025年の場合)=2万5千円

2万5千円+525円(復興特別所得税額)=2万5,525円

所得税は2万5,525円となります。

500万円の所得に対する税金としては良心的といえるのではないでしょうか。

FPハマヲ
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では勤続年数がある程度長い場合はどうでしょうか?

 

たとえば、勤続30年で退職金が2,000万円の場合の退職所得税は、25万5,250円となります。

ただしこれは退職時に一括して受け取る場合です。年金形式で分割して受け取る場合は税金の計算方法自体が変わるので注意が必要です。

このように退職金については税金の面でかなり優遇されているのがわかります。ところがここ最近、この優遇を見直そうという改正案が浮上しているようで、今後の動向に注目しなければなりません。

退職金の住民税と社会保険料

退職所得にかかる所得税についてみてきました。では、住民税はどうなるでしょうか?

FPハマヲ
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「退職所得」にかかる住民税の税率は一律10%ですが、こちらも所得税とまったく同じ控除があるので、退職金の額がそれほど多くなければ気にすることはありません。

仮に10年間働いた場合、退職金が400万円以下ならば住民税はかかりません。

先ほど例に挙げた勤続30年で退職金が2,000万円の場合の住民税は25万円となります。

次に社会保険料ですが、

退職金からは社会保険料は引かれません

FPハマヲ
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ただしこれは退職時に一括して受け取る場合です。これも税金と同じで、年金形式で分割して受け取る場合は話が違います。

この場合はやはり他の収入と合算されてしまい、社会保険料が引かれてしまう場合があるというわけです。

忘れてはいけない退職金の手続き

退職金の受け取りについて忘れてはいけないのが手続きに関することです。

手続きといっても特に難しいわけではなく、書類をひとつ提出するだけなのですが、それを出すか出さないかでけっこう違いが出てきます。

この書類が、「退職所得の受給に関する申告書」というもの。

これを会社に提出すれば、さきほど説明した計算式に沿って所得税と住民税が源泉徴収されて、これで納税は完了するので、他に何もすることはありません。

FPハマヲ
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この「退職所得の受給に関する申告書」を提出しないと、退職金の支給額(総支給額)の20.42%の所得税と10%の住民税が徴収されてしまいます。

これは本来納めるべき税額より多いわけですが、取り戻すためには確定申告をして清算しなければなりません。ちょっと面倒ですから、必ず提出しましょう。

まとめ

日本の雇用の形は劇的に変化することはないものの、確実に変わりつつあります。

そして会社というものとの関わり方に対する意識も変わり、その影響のひとつとして退職金の額は減りつつあるわけです。

老後の生活の支えのひとつとなる退職金の金額やそれにかかる税金はたしかに重要なテーマですから、基本的なルールを把握しておくことも必要です。

退職金が税制面で優遇されていることを知れば、不要な心配をすることもありません。

しかしそれと同時に、人生100年時代の今、還暦世代の私たちが意識を向けるべきは、雇用の形の変化のほうなのではないでしょうか。

ジョブ型雇用の時代は、いま何ができるのかを問われる時代ともいえます

FPハマヲ
FPハマヲ

それは年齢とは関係なく評価してもらえるという意味でもあります。つまり、私たち還暦世代が今まで培ってきた知識やスキルが活かせる時代ということではないでしょうか。

還暦が引退だったのは過去のこと。

還暦はスタートの時なのです

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