AIが進化しても奪われない仕事とは?キーワードは「ホスピタリティ」

AI社会

AIの進化の話題には必ずと言っていいほど「無くなる仕事」に関するさまざまな意見がついてまわります。

かつての産業革命の折には、工業の機械化が急速に進んだ結果として多くの労働者が仕事を失いました。さらに第3次産業革命と言われるIT技術の急速な導入により、比較的単純なデスクワークも、人間の手を離れてコンピューターの守備範囲となったのです。

そして今、AIによる代替が可能な仕事の幅は急速に広がりつつあり、さらに多くの業務が自動化されることが予想されています。

しかしそれでも人間には重要な仕事が残されると考えられ、その急激な変化の中にあっても、AIに取って代わられることのない仕事に共通する言葉のひとつが、

「ホスピタリティ」です。

ホスピタリティ・・頻繁に耳にするこの言葉は、なんとなく意味はわかるものの、明確な説明をすることが難しいのではないでしょうか。

そういった言葉は身の回りに多く存在しますが、それがこれからの社会や職業に大きく関わるものだとしたら、できるかぎり明確にする必要があります。

この記事では、私たちが今後ますます進化をとげるであろうAIと共存していく中で、身につけなければならない必須スキルのひとつであるホスピタリティについてまとめました。

ホスピタリティとは

日本はホスピタリティの高い国といわれます。

そうです。あの、「お・も・て・な・し」のホスピタリティですね。

語源は英語の「ホスピス」で、ホスピスというのは巡礼者や旅行者・病人を厚くもてなす宿泊施設を表す言葉だそうです。病院を意味する「ホスピタル」もここから派生しています。

AIには難しいホスピタリティ

日本ホスピタリティ推進協会というNPOのサイトではホスピタリティについて次のように説明しています。

ホスピタリティとは、人が人に対して行ういわゆる「もてなし」、接客・接遇の場面でも使われるホスピタリティだけでなく、社会の人々が相互に助け合い、社会を豊かにするという意味を持ちます。

また、企業活動においても、顧客との間だけでなく、従業員や地域社会に対するホスピタリティにより、社員の働きがいやチームとしての創造性、地域社会との関係性を高め、好ましい経営環境をつくりあげることができます。

このように、ホスピタリティが要求されるのはいわゆるサービス業の分野だけでなく、ひとと関わる全ての職業のあらゆる場面といえるでしょう。

そのさまざまな関わり合いの中では、相手の思いや感情に対しての心配りが必要とされ、それはパターン化することが難しく、マニュアルを作ってその通りに実行すればよいという性質のものではありません

この点がAIが代替することが難しく、私たち人間に残される要素といえる理由なのではないでしょうか。

ディズニーリゾートのホスピタリティ

言葉の意味を確認しても、やはりボンヤリとしかわからないのが、このホスピタリティです。そこで、身の回りにある具体例を見てみることにしましょう。

ホスピタリティの象徴としてあげられるのが「キャスト」と呼ばれるディズニーリゾートのスタッフです。

キャストは、ゲストとの感情的なつながりを築くことを重要視し、人間ならではの温かみや共感、個々の体験に合わせた細やかな配慮を常に心がけています。そのためには自身の感情や直感に基づく状況判断や臨機応変な対応が求められます。

東日本大震災の際、「頭を守るために」と店頭に並べられたぬいぐるみをゲストに配ったエピソードはたいへん話題になりました。

そんな特別な場合以外でも、予期せぬトラブルが発生した場合、キャストは迅速に対応しゲストの心情やニーズに合わせた解決策を提供します。

急な雨で傘を持っていないゲストに無料の傘を提供したり、雨の水たまりを利用して地面にキャラクターの絵を描くパフォーマンスを見せるなど、その機転を利かせた行動が、雨というマイナス要素を快い思い出に変えるのです。

ホスピタリティが重要視される職業

言葉の意味がだいぶはっきりとしてきたところで、ホスピタリティーが重要視される具体的な職業をみてみましょう。あわせて、AIには難しいその仕事の特徴も考えてみます。

ホテルフロントスタッフ、コンシェルジュ

フロントスタッフ

ホテルのフロントスタッフは、宿泊客と直接接触し、チェックインやチェックアウト手続きや質問や要望に対応する重要な役割を果たします。

心温まる笑顔と丁寧なコミュニケーションで、お客様に快適な滞在体験を提供することが求められる仕事です。

予約の自動化や機械によるチェックインやチェックアウトシステムの導入も進んでいますが、宿泊客に対して温かい歓迎や心地よい経験を提供する役割はやはり重要なのではないでしょうか。

コンシェルジュ

ホテルの業務の中で、更に細かい要望に応えるのがコンシェルジュです。

コンシェルジュは宿泊客の要望に応じてさまざまなサービスを提供します。周辺の観光地やイベントの紹介、ツアーやチケットの申し込み、タクシーや航空券の手配など、その内容は多岐にわたります。

コンシェルジュを務めるには幅広いサービスや施設、手続きなどの知識が必要なだけではなく、宿泊客の要望にどれだけ親身になって対応ができるかが重要な要素となります。

では、AIによる代替が難しいそのコンシェルジュの仕事の特徴を見てみましょう。

  1. 記念日など特別なリクエストの実現

特別な瞬間を作り出すためには、ゲストとのコミュニケーションや直感的な判断が不可欠です。また、感動や驚きを引き起こすためには、細部への気配りも必要になります。AIには情報と指示に基づいて瞬時に決定や行動をする能力がありますが、感情や状況を理解することが難しく、想像力にも欠けるため、臨機応変な状況対応は難しいといえます。

2.地元の秘密スポットの紹介

地域情報の提供はAIの得意分野ではありますが、地元の秘密スポットに関する情報などは、現地での交流や経験によって得られる、人間ならではのものといえます。その土地の文化や雰囲気を正確に理解したうえで宿泊客個々の好みや興味に合わせたアドバイスをするのは簡単ではありません。

  1. 緊急時のサポート

宿泊客に急病人が出た場合など、緊急の状況に対しての迅速かつ適切な対応が求められます。AIは医療機関の情報を提供することはできますが、急な状況変化や状態を正確に見極めて必要なサポートを提供するためには、人間の直感や判断力が必要なのです。

これらの特徴はホテルコンシェルジュに求められるホスピタリティの本質的なものといえます。

感情や人間関係の構築、臨機応変な対応などは、AIが完全に再現することが難しい要素で、これからも人間の持つ特性が求められる仕事といえるでしょう。

フードサービス・料理人

飲食店の現場でもAIやロボットの導入が進んでいます。厨房に設置された機械が人間よりも正確にオペレーションを実行して安定した品質の料理を作り、それを配膳ロボットが客席に運ぶ。大手外食チェーンを中心にそういった形への変革が急速に進められつつあります。

とはいえ、すべての飲食店がそういう方向に向かっているかといえばけっしてそんなことはありません。

ここでは、飲食店のサービスとホスピタリティについて、AIには難しいとされる視点から解説します。

フードサービス

1.メニューの提案とニーズへの対応

飲食店のサービスでは、お客様の好みやニーズに合わせておすすめのメニューを提示したり、時には特別な要望や変更に対応することも必要になります。微妙なニュアンスを読み取りながら状況に合わせた配慮をすることは、現段階のAIには難しいでしょう。

2.お客様とのコミュニケーションと関係づくり

お客様の満足度は、サービスするスタッフとのコミュニケーションによって大きく変わります。些細なやり取りの中でも信頼関係が築かれたり、逆に失われたりすることがあるので、スタッフには常に相手の心情を読み取ったり、細やかな配慮をすることが求められます。AIにも情報を読み取り適切な対応をする能力はありますが、相手の表情から感情を読み取ったり、笑顔や共感の表現などで相手に心地よい印象を与えたりすることは難しいでしょう。

4.食事の提供とサービスのタイミング

食事の場では、料理の質はもちろんのこと提供するタイミングやサービスの流れも重要になります。特にコース料理では、テーブルのお客様全員の状況を見極めて提供の判断をする必要があります。しかし、AIには食事の進行やお客様の様子から適切なタイミングを判断することは難しいでしょう。

これらの要素は飲食店のサービスの核になるもので、AIにとっては難しいとされる要素です。人間の感覚的な部分や臨機応変な判断はホスピタリティの重要な部分となります。

そしてこれは高級店や特別な食事の場面だけに言えることではありません。大衆的な定食屋や居酒屋でも、同じような満足感を得ることもあります。

店のスタッフが顔と名前を覚え、来店するたびに挨拶し親しみを示すことで、お客さまは居心地の良さや特別感を得ることができます。そして、気軽な会話を楽しみながらの食事は家庭的で手作りの感覚を提供します。

AIのコミュニケーション能力は進化を続けていますが、人間同士の自然な対話や軽妙なトークを模倣するのは難しいでしょう。

料理人

機械による食品の製造技術はAIによって急速に進化しています。今までは難しいとされていた熟練職人の感覚をAIが学習することで、微妙な火加減やタイミングを調整し制御することが可能になりました。

とはいえ、現段階ではその技術の導入は規模の大きな食品製造の現場に限られていて、一般の飲食店では、手仕事だからこそできる繊細な調理技術は不可欠です。

誰でも同じ品質の料理ができるオペレーションの効率化は常に進められてきましたが、食材の見極め、包丁使いや火加減、センスの活きた盛り付けや演出など、料理に対する心配りや調整は、やはり人間の感覚的な部分が重要になってきます。

AIをはじめとした技術の進歩で調理の現場が変わっていくことはじゅうぶん予測できますが、機械化が進めば進むほど逆に手仕事の価値が見出され、その違いがより鮮明になるとも考えられます。

看護師や介護士

看護師や介護士の仕事には感情的な面や個別のニーズへの対応が重要な要素となっていて、通り一辺倒の対応では質の高いサービスにならない職種といえます。

データの管理や共有、緊急時の対応の提示など、AI技術の導入が進められている医療や介護の現場ですが、看護師や介護士の仕事において、AIには難しいとされる要素について見てみましょう。

1.感情的なサポートと共感

   看護師や介護士は、患者や利用者と深い関わりを持ち感情的なサポートや共感を提供します。患者や利用者の心のケアには、人間同士のつながりが不可欠なのです。

患者が治療中に不安や落ち込みを感じているとき、看護師が時間をかけて患者と対話することは、患者にとって大きな心の支えになります。特に、表情やジェスチャー、声のトーンなどは、人間同士のコミュニケーションにおいて重要です。

患者や利用者の状態や感情を理解し適切に対応するためには、こういった言葉以外のサインを読み取る能力も必要です。AIのコミュニケーションは言葉が主体であり、非言語的な要素を理解することが難しいです。

2.倫理的な判断と道徳的な対応

   医療や介護の現場では、時に複雑な倫理的判断が求められます。患者の選択や権利を尊重しつつ、最善のケアを提供するためには、個別の状況を考慮して道徳的な判断を行う必要があります。

患者が意識不明で、家族が治療の続行か中止かで意見が分かれているときなど、看護師は家族とのコミュニケーションを通じて患者の希望や家族の考えを尊重し、医師の最終的な判断に影響を与える場合もあります。

AIは複雑な心の葛藤などを正確に理解することが難しく、そういった緊急の場面では人間の判断力が必要です。

3.身体的なケアと技術的なスキル

看護師や介護士は、身体的なケアや医療的な処置を提供する役割も果たします。緊急時には医療の知識や技術を駆使して、医師の判断や要求に合わせた対応をしなければなりません。

AIは特定のタスクや処置をサポートする能力はあるものの、人間の感覚や技術的なスキルが必要な場面も多く、AI単体では代替しきれない側面です。

これらの要素は、看護師や介護士の仕事において不可欠な部分であり、AIが難しいとされるものです。

AIは医療データの解析やパターン認識に優れており、正確な診断に役立つ可能性は高いですが、患者との共感や情緒的なサポート、人間としての温かいホスピタリティーは看護師や介護士の重要な役割として残されます。

手術の後で麻酔から覚めたとき優しく声をかけてくれるのはやはりロボットではだめなのです。

もちろん、AIの進化は病院や介護施設の仕事に大きな変化を与える可能性が高いです。

看護師や介護士はAIによって得られたデータや診断結果をもとに、より的確なケアプランの立案や患者のサポートを行い、また、AI技術を応用したロボットや自動化システムが、身体的な介助や日常生活の支援に活用される可能性はあります。

医療や介護の現場では、AIと人間が連携し、より質の高い医療・介護サービスを提供することが期待されます。

まとめ

急速に進化が進むAIによって多くの仕事が代替されると言われていますが、それでも人間には重要な仕事が残されると考えられています。

その急激な変化の中にあっても、AIに取って代わられることのない仕事に共通する言葉のひとつである「ホスピタリティ」について見てきました。

ここに挙げた職業は、ホスピタティーに焦点を当てており、AIでは難しい人間の特有の能力とスキルが求められる仕事といえます。それぞれの現場で起こりうる多様な状況に対応して、その時々に高度な判断が求められることが多いと考えられるからです。

これらの分野においては、人間の役割は引き続き重要であり、社会や産業の発展に貢献していくでしょう。

歴史的に見ても、技術の進歩は人間の仕事を奪うという観点から負の要素として語られることがあります。しかしAIは人間の敵ではなく、人の仕事をサポートしてより高い成果を上げるための仲間と考えた方がいいのではないでしょうか。

私たちの想いがどうであれ、AIの進化は止まることはありません。その特性を理解して自分の仕事にどのように利用することができるかを考えることが、組織から必要とされる人材であり続けるためには必須といえます。

逆に言えば、AIにできることしかできない人から仕事が奪われ、AIを活用して自分はAIにできないことに注力できる人に、仕事が集中することになるのは確実です。

AIはとても優秀な仕事のパートナーである。そう考えるのが最良で現実的ではないでしょうか。

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