60歳前後になると、住まいの環境に変化が生まれる方は少なくありません。
「退職金で住宅ローンを完済した」
「子どもが独立したので夫婦二人で小さめの賃貸へ転居した」
このような節目に意外と忘れられがちなのが 火災保険の見直し です。

火災保険は生命保険や医療保険ほど注目されませんが、万一の災害から家や生活を守る大切な備えです。
とくに収入が限られるシニア世代にとって、「もしもの出費」を保険でカバーできるかどうかが暮らしの安心度を大きく左右します。
この記事では、火災保険の基礎知識と還暦世代での見直しポイントを中心に解説していきます。
火災保険とは?基本を確認
近年、台風や集中豪雨による水害や大規模な地震などが多発しており、火災だけでなく自然災害への備えの重要性が高まっています。
しかし、持ち家世帯の火災保険・共済の加入率は82%と、未加入の世帯も多いようです。
そしてまた、加入している人の大半は補償内容についてあまりよく理解していないという現状もあります。

火災保険は「火事になった時のための保険」というイメージが強いかもしれませんが、カバーできる範囲はけっこう広範囲にわたります。
未加入の場合は加入を検討する必要がありますし、すでに加入している人も補償内容を確認して見直しを考えてもよいでしょう。
火災保険で補償されるもの
火災保険は、「火災」だけでなく、様々な災害から大切な財産を守るための保険です。
- 火災:火事による損害
- 風災:台風や竜巻、暴風などによる損害
- 水災:洪水や高潮などによる損害
- 雪災:大雪やなだれなどによる損害
- 落雷:落雷による損害
- 破裂・爆発:ガス漏れなどによる破裂・爆発の損害
- 盗難:盗難による家財の損害
これらの被害に遭った際、修繕費や再建費用を補償してくれるのが火災保険です。
特に近年は 台風や豪雨による水害 の請求が急増しています。
地震による被害は対象外
火災保険は地震による損害をカバーしません。
火災保険と地震保険の関係は、けっこうややこしく、勘違いしやすいポイントなので、ポイントを整理しておきましょう。
なぜ地震は火災保険で補償されないのか?
地震による被害は、被害規模が極めて大きいので、保険会社だけでは支えきれないという特徴があります。
たとえば大規模地震で多数の住宅が一度に倒壊したり焼失したりすれば、数兆円規模の損害が発生することも考えられます。

このような、損害の金額が大きく、しかも一斉に起きるリスクは、民間保険会社が単独でカバーするのが難しいため、火災保険からは除外されています。
地震が原因で発生した火災の扱いは?
通常の火災は、もちろん火災保険で補償されます。では、 地震が原因で起きた火災も同じように扱われるのでしょうか?
結論から言えば、地震が原因の火災は、火災保険では対象外となります。
たとえば、
地震で家が倒壊し、コンロの火が燃え広がって火災となった。
地震でガス管が破損してガスが漏れ、引火で火災が発生した。
こういうケースは、火災保険の補償外となるのです。

つまり「火災」という現象は同じでも、原因が地震かどうかで扱いが変わるということです。
そこで注目されるのが、「地震保険」です。
地震保険は、保険会社と政府が共同でリスクを分担する仕組みで運営されており、これによって巨大地震による住宅損害もカバーできるようになっています。
地震を原因とした火災に対応できるのが、この地震保険なのです。
地震保険でどこまでカバーされる?
地震保険は、建物や家財に対し、以下のような損害を補償します。
- 地震による倒壊・損壊
- 津波による流失・浸水
- 噴火による損壊
- 地震を原因とした火災
ただし、火災保険のように、修理費用を実額で全額補償でしてくれるわけではありません。

被害の程度に応じて「全損」「大半損」「小半損」「一部損」と区分され、保険金が支払われる仕組みになっています。しかも、建物や家財の評価額の30〜50%が上限です。
還暦世代で火災保険を見直すべき理由
火災保険の基本を押さえたところで、還暦世代がどうして火災保険の見直し時期なのかを見ていきましょう。
持ち家の場合:ローン完済後の見直しポイント
住宅ローンを組む際は、火災保険の加入が必要になります。

法律上「必ず加入しなければならない」という義務はありません。しかし実際に住宅資金を借りる際、 金融機関が融資条件として火災保険加入を求めるケースがほとんど です。
しかし、ローンを完済した後は、必ずしもその保険を継続する必要はありません。
ローン完済後の火災保険見直しのポイントは以下の通りです。
建物の評価額を見直す
建物の価値は年々下がるものです。新築時の評価額のまま保険に入っていると、保険料を払いすぎている可能性があります。
現在の建物の評価額に合わせた保険金額にすることで、保険料を抑えられます。
必要な補償内容を見直す
子どもが独立して家財の量が減った場合、家財保険の補償金額を見直すことができます。
また、以前は加入していなかった地震保険を検討するなど、ご自身のライフスタイルに合わせて補償内容を調整しましょう。
保険料を比較する
保険会社やプランによって、保険料は大きく異なります。同じ補償内容でも、より安い保険料で加入できる可能性があります。
賃貸の場合:引っ越し時の注意点
「子どもが独立して夫婦二人になったから、少しコンパクトな部屋に引っ越した」という場合もあるでしょう。
賃貸の火災保険は、一般的に入居時に加入が義務付けられていますが、引っ越しをする際は必ず新しい物件で再加入する必要があります。
旧居の保険は解約手続きを忘れずに
引っ越し後、旧居の火災保険をそのままにしていると、無駄な保険料を払い続けることになります。忘れずに解約手続きを行いましょう。
新しい保険で家財の補償内容を見直す
新しい物件の広さや、家財の量に合わせて、家財保険の補償金額を見直しましょう。不要な補償を削ることで、保険料を抑えることができます。
見直し時のチェックポイント
●契約から10年以上経っていないか?
火災保険は制度改正で補償内容や保険料水準が変わっています。10年以上前に契約したまま放置だと、割高だったり補償が不足していたりする可能性が高いです。
●家財の補償額は今の生活に合っているか?
単身から家族暮らしへ、あるいは子どもの独立など、生活状況で家財の総額は変わります。必要以上に多く設定していると保険料の無駄になり、少なすぎると実際の被害に対応できないことも。
●水災補償は外していないか?(地域リスク要確認)
水害リスクが低い地域では外す人もいますが、近年は「想定外の豪雨」が増加。ハザードマップで自宅のリスクを確認し、外すと大きな経済リスクを背負う可能性もあります。
●免責金額を高めにしていないか?(老後資金と照らして妥当か)
免責金額とは「自己負担する下限額」。免責を高くすれば保険料は下がりますが、いざというとき自己負担が重くなるので、老後資金とのバランスを見て妥当かどうか考えることが大切です。
●更新時に比較検討したことがあるか?
同じ補償内容でも保険会社によって保険料は大きく異なります。比較するだけで数万円の差になることもあります。
この中で1つでも「不安」があれば、見直すタイミングといえるでしょう。
まとめ
「火災保険の見直し」と聞くと、少し面倒に感じるかもしれません。
しかし、これは「大切な住まいと財産を、これから先の人生でどのように守っていくか」を考える良い機会です。
還暦世代の火災保険見直しには、
- 住まいに合った補償を選ぶ
- 老後資金を災害リスクから守る
- 無駄な保険料を減らす
という大きな意味があります。
「今の保険が自分に合っているのか知りたい」
「他の保険会社と比較してみたい」
という方は、ぜひ一度、火災保険の一括見積もりサービスを利用してみてはいかがでしょうか。
火災保険は補償範囲や保険料が複雑で、「このまま更新して大丈夫?」と不安になるものです。
複数の保険会社の見積もりを一度に比較できるので、ご自身の状況にぴったりの保険を効率よく見つけられます。
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