20年で1,000万円減!雇用の形の変化で退職金が激減!その手取り額は?

雇用と働き方

高年齢者雇用安定法は段階的に改正されて、今では「70歳までの就業機会確保」というのが努力義務とされています。

「義務と努力義務」そして制度改正につきものの「経過措置」というものによって、この定年の年齢の話はとても分かりづらくなっています。

2025年には65歳定年が義務化されるという話をよく耳にしますが、これも厳密に言えば間違っているようです。

正確に言えば、

定年を60歳に設定している会社でも、希望者全員を「65歳まで雇用することが義務」そして「70歳まで雇用することが努力義務」となっています。

定年を65歳以上にしなければならないということではないので、60歳定年の会社では、希望しなければそのまま60歳で退職となるわけです。

そうなると気になってくるのが退職金。

60歳で退職する場合はもちろんですが、再雇用で働き続けるとしても、いったん退職することになり、その時点で退職金が支給されるのが一般的です。

ところが、その退職金の額は年々減り続けていて、老後の暮らしの支えとしての意義は失われつつあるというのです。

この記事では、退職金の現状と、それに大きくかかわっている雇用の形の変化。そして気になる年金の手取り額までをまとめました。

この20年で1,000万円減少!

厚生労働省の調査では、

退職金の平均額は1997年が2871万円、20年後の2017年には1788万円。20年間で1,000万円以上減っています。

ただ、そもそも退職金の額というのは企業の規模や勤続年数、職種などによって大きな違いがあるので、平均で1,000万円減!と言われてもあまりピンと来ませんね。

とはいえ、全体的な傾向として大幅に減少してきているとなると、誰にとっても嬉しい話ではありません。

どうして退職金がこんなに少なくなってしまったのだろう?

長く続く不景気のせい?それももちろん理由のひとつですが、そこには働き方の変化や会社というものに対する考え方の変化が大きくかかわっているのです。

雇用の形の変遷が退職金に与える影響

ひとつの会社に長く勤めて最後に大きな額の退職金をもらう。そんな働き方が主流ではなくなり、今は多くの人が幾度かの転職を経て定年を迎えるようになりました。

その結果、退職金に期待する人も減り、老後の生活の支えとしての意味合いは大きく変わってきたのです。

そうなると企業側としても、大きな退職金を準備するより、成果に見合った報酬が得られる環境を用意するほうが、良い人材を集めるには効果的だということになってきます。

この成果報酬型への移行はなかなか進まないとはいうものの、終身雇用は過去のものになりつつあり、年功序列にもはっきりと変化がみられます

そんな雇用の形の変化の中で、退職金の額もだんだん少なくなってきたのです。

「働かないおじさん」の消滅は近い?

「学歴至上主義はもう終わる。年功序列、終身雇用という日本型の雇用の形はもう古い」

もう40年近くも前から、すでにそう言われていましたが、今でもほとんどの企業は一括で新卒の学生を採用し、その際には当然のように大学名でフィルターをかけているようです。

社員のモチベーションアップには実績によって評価される成果主義的な考え方が必要だという意見は常にあるものの、それが定着した例はとても少ない。

1990年代には成果主義を取り入れようという動きが高まった時期もありましたが、なかなかうまくいかなかったといいます。

「定期昇給、勤続年数に応じた役職。会社は一生めんどうを見てくれる」

そんなつもりで入社した人たちが成果主義の給与体系を受け入れるのは簡単ではなく、成果主義への動きはそれほど進まなかったのでしょう。

その結果、いまだに「働かないおじさん」はしっかりと会社に根をおろしているというわけですね。

ところが最近、やや新しい動きが出てきました。

メンバーシップ型雇用からジョブ型雇用へ

2020年、「経営労働政策特別委員会報告」の中で、経団連が日本企業にジョブ型雇用制度の導入を呼びかけました

《ジョブ型雇用とは》

採用の際に、職務内容、勤務地、勤務時間などの条件を明確に決めて雇用契約を結ぶ形。雇用される側は、その契約内容の範囲内で働くので、部署の異動は無く、決められた業務だけを遂行できればよい。転勤がないかわりに、基本的には昇進や降格もない。

これに対して、今までの日本の一般的な雇用の形を「メンバーシップ型」といいます。

《メンバーシップ型雇用とは》

新卒で一度に社員を集めて会社が教育をし、人事的な判断で人員を配置していく。部署の移動や転勤もある。希望の職種につけないこともある代わりに、よほどの理由がない限り雇用は保証される。

経団連がこのジョブ型雇用を推奨した目的は優秀な人材の獲得でしょう。

年齢や勤続年数に関係なく、契約通りの職務を成し遂げれば高い報酬が手に入るとなれば、意欲と実力のある優秀な人材が入って企業の業績が上がり、結果的に日本経済全体を押し上げるのです。

しかし、この目的に繋がるような変化は実際に起こるでしょうか?

いろいろな障害が生まれることが想像できます。長い間の習慣や意識はそう簡単には変わらないものですから。

ただ、先進国だけでなく世界のほとんどの国がこのジョブ型だという現状から、グローバル化が進む今、その方向に舵を切る以外の選択肢はないと思われます。

減っているからこそ気になる退職金の手取り額

雇用の形や会社というものに対する意識は、徐々にではあるものの確実に変わってきています。

やがて退職金という制度もなくなることが考えられますが、今まさに退職の年齢にある私たち還暦世代には、退職金にある程度の期待を寄せている人も多いでしょう。

退職金の額には企業の規模や勤続年数、職種などによって大きな違いがあるので、それぞれ状況は異なります。ただ、誰にも共通の気になるところは、その手取り金額ではないでしょうか?

毎月の給与明細を見てほとんどの人が思っているはずです。

所得税、住民税、健康保険料、年金保険料・・あまりにも負担が多すぎると。しかもボーナスからも容赦なく持っていかれるのです。

もしかしたら退職金からもこの勢いでいろいろと引かれるのでしょうか?ただでさえ少ない退職金ですからそれは勘弁してほしいですね。

退職金にかかる税金

退職金には「所得税」と「住民税」が課税されます。しかし、普通の所得税のように課税されるわけではありません。

退職金は「退職所得」という所得区分になります。これは税金の計算をするときに他の収入とは分けて計算される、いわゆる「分離課税」というものです。

累進税率で計算される所得税は収入が多いほど税率が上がるので、退職金を合算して総合課税にすると、退職金の額によってはとんでもない税額になってしまう

そんなことにならないように別に計算をするわけですね。

その「退職所得」にかかる所得税の計算式はこうなっています。

(退職金収入金額-退職所得控除額)ⅹ2分の1=課税退職所得金額

⇒課税退職所得金額ⅹ退職所得税率-控除額=基準退職所得税額

⇒基準退職所得税額+復興特別所得税額=退職金に課税される所得税の合計

実際の税額はこの計算式で算出しなければわかりませんが、勤続年数が20年以下の場合の所得控除は40万円×勤続年数なので、勤続年数が短い場合の所得税については基本的に気にしなくていいということになります。

そして、実際にシュミレーションしてみると分かりますが、勤続年数が長い場合でも、よほど高額の退職金をもらわない限り、所得税はそれほど大きな額にはなりません。

たとえば、勤続20年で退職金が1,000万円の場合の所得税は、復興特別所得税額と合わせて、5万1,050円となります。

では、住民税はどうなるでしょうか?

「退職所得」にかかる住民税の税率は一律10%ですが、こちらも所得税とまったく同じ控除があるので、退職金の額がそれほど多くなければ気にすることはありません

先ほど例に挙げた、勤続20年で退職金が1,000万円の場合の住民税は10万円となります。

忘れてはいけない退職金の手続き

高額な退職金には縁が無いという場合でも、気をつけなけばいけないことがいくつかあります。

ひとつは退職金のもらい方。一括か?分割か?ということです。

一括の場合、税金の計算は先ほどのとおりですが、分割して年金形式で受け取るとなるとちょっと話が違ってきます。

一括の場合は「退職所得」として「分離課税」されますが、分割して受け取る場合は年金と同じような扱いで「雑所得」になり、他の収入と合算されて「総合課税」になってしまうのです。

年金扱いなので、公的年金等控除が適用されはしますが、やはり税額は多少多くなるケースが多いようです。

そして忘れてはいけないのが手続きのこと。手続きといっても特に難しいわけではなく、書類をひとつ提出するだけなのですが、それを出すか出さないかでけっこう違いが出てきます。

この書類が、「退職所得の受給に関する申告書」というもの。

これを会社に提出すれば、さきほど説明した計算式に沿って所得税と住民税が源泉徴収されて、これで納税は完了するので、他に何もすることはありません。

しかしこの「退職所得の受給に関する申告書」を提出しないと、退職金の支給額(総支給額)の20.42%の所得税と10%の住民税が徴収されてしまいます。

これは本来納めるべき税額より多いので、確定申告をして清算しなければならないのでちょっとめんどうですから、必ず提出しましょう。

退職金と社会保険料

退職金からは社会保険料は引かれません

ただしこれは退職時に一括して受け取る場合です。これも所得税と同じで、年金形式で分割して受け取る場合や、在職中に給与に上乗せしてもらう場合は話が違います。

この場合はやはり他の収入と合算されてしまい、社会保険料が引かれてしまう場合があるというわけです。

まとめ

日本の雇用の形は劇的に変化することはないものの、確実に変わりつつあります。

そして会社というものとの関わり方に対する意識も変わり、その影響のひとつとして退職金の額は減りつつある。

人によっては老後の生活の支えのひとつとなる退職金はたしかに重要なテーマではありますが、人生100年時代の今、還暦世代の私たちが意識を向けるべきは、雇用の形の変化のほうなのではないでしょうか。

ジョブ型雇用の時代は、いま何ができるのかを問われる時代ともいえます

それは年齢とは関係なく評価してもらえるということでもある。それは、私たち還暦世代が今まで培ってきた知識やスキルが活かせるということではないでしょうか。

還暦が引退だったのは過去のこと。還暦はスタートの時なのです。

《参考記事》➡「ライフシフト」が示す、変化の時代を生きるための3つの「見えない資産」

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