年金の基礎知識でモヤモヤと不安を解消!受給年齢だからこそ知るべき年金の真実とは?

年金

「年金制度は破綻に向かっている!」

そんな話題が私たちの不安をかき立てる状態が長いあいだ続いています。その原因のいちばんに挙げられる少子高齢化は現実に進んでいて、今後しばらくはその傾向は変わりません。

年金の受給年齢にさしかかる還暦世代にとって、この「年金破綻論」がきわめて深刻なことはいうまでもありません。

長い年月、なんとか納め続けてきた年金保険料が泡と消えてしまう。そんなことがほんとうに起こるのかな?

若い頃は年金と聞いても、それは遠い未来の話でした。

しかし今、報道でしばしば取り上げられる「年金受給者の悲惨な現状」にも、制度の維持の危うさを感じて漠然とした不安に襲われることも多いのではないでしょうか。

それは「年金のことがよくわからないから」なのかもしれません。年金のことに限らず、漠然とした不安の原因は知識不足だったりします。

何となく心配だけどよくわからない。よくわからないから、もっと不安になる。

そこでこの記事では、漠然とした不安の正体を解明して、その不安ときちんと向き合うために、

「そもそも年金制度とはどんなものなのか?」
「年金制度の破綻はあり得るのか?」
「どうしてこの年金制度はこんなに分かりづらいのか?」

そんな視点で年金制度を検証しながら、私たちのこれからの生活に大きく影響する年金の行く末を考えていきます。

イライラのもと「年金の勘違い」

振り返ってみると年金とは長い付き合いになりました。私たちが20歳の頃は学生の加入は任意でしたから、ほとんどの人は就職して初めて年金に加入したのだと思いますが、そのころ年金のことなどあまり考えていなかったように思います。

そしてそれ以降も年金について意識していたという記憶はありません。

何十年も先のことに真剣に向き合うことができる若者はほとんどいませんから、年金というのは、ただ自分の収入から貴重なお金を奪っていくものという程度の認識しかなかったのでしょう。

考えてみれば無理もありません。時には不祥事報道が世間を賑わし、破綻説まで聞こえてくるこの年金。遠い将来、しかも貰えるかどうかも分からないお金より、今払わされている金額のほうが我が事なのです。

こんなに苦労して支払ったお金は、はたしてどれだけ取り戻せるのか?
もしも年金をもらう年齢になる前に死んでしまったら?
もらい始めたとしても、わずか数年で死んでしまったら?

強制加入なので入らないという選択肢がない年金への疑問を解消するには、やはりその制度について詳しく知ることが必要なのでしょう。

年金でもらえる3つのお金

「歳をとったら国からお金をもらって、働けなくなってからはそのお金で何とか生きていく」というのが年金のイメージです。

しかしそれ以外にもいろいろな保証があるのを知らない人も多い。不安解消の一歩として、私たちが年金で受けられる保証について確認していきましょう。

年金の保証は大きく分けて3つあります。
①老齢年金 ②遺族年金 ③障害年金
です。

老齢年金・・歳をとってからもらえるお金。

遺族年金・・自分が死んだとき、家族が受け取れるお金。

障害年金・・自分が怪我や病気で働けなくなったときにもらえるお金。

どの場合も支払われる金額は保険料を支払った期間や金額によって変わります。そして遺族年金はその時の家族構成などによっても補償内容が大きく変わる。

いずれにしても、この3つの保証がセットになったのが、年金制度というものなのです。老齢年金しか意識になかったなら、意外に感じたかもしれません。

年金は保険である

年金の3つの保証を見てみると、ここで気づくことがあります。こんな感じの保証がセットになったものが他にもあるのではないかと。

それは「保険」です。

いま、多くの人がいくつかの保険に加入しています。生命保険、医療保険、損害保険。年金はそういった保険と基本的には同じなのです。

そういえば、私たちが長いあいだ支払っているのは、「年金保険料」という名前であり、加入している私たちは「被保険者」と呼ばれていますね。

ひらめきそうです。年金は保険だったのです。年金を貯金のように考えているのなら、考え方を大きく変える必要があるかもしれません。

なぜなら、自分が年老いてから貰うお金を半ば強制的に貯めさせられているという感覚が、「どれだけ取り戻せるのか?」というモヤモヤを生んでいたからです。

自ら入っている生命保険や損害保険には「払い損」というような意識はないはずです。結果的には無駄になるかもしれないし、実際ほとんどの場合は払った以上のお金を受け取ることはありません。

しかし、それが保険というものなのだから仕方がないと納得できるのです。

年金がカバーするいちばん大きなリスク

年金は保険であるという認識で、年金について考えてみましょう。

そもそも保険とは、たぶん起こらないけれど、もしも起きたら大変なことになるという事態に備えて入るもの。安心を買うという言い方をするのはそういうことだからでしょう。

では、この年金という名の保険に入っている私たちにとって、もしも起きたら大変な事態とは何でしょう?

もちろん、若くして亡くなることも、ケガや病気で働けなくなることも大きなリスクには違いありません。そのために多くの人が何かしらの生命保険や医療保険に入っているのです。

 

しかしそういう保険でカバーしきれないリスクもあります。それが、「長生きのリスク」です。

もしも長生きしてしまったらどうする?という妙なリスクですが、想像してみればわかるとおり、それはたしかにリスクといえます。

歳をとって働けなくなって、それでもまだ生きていたら生活費はどうする?

蓄えのないままそんな状況に置かれることを考えたら恐怖すら感じます。

本来なら喜ぶべき長生きがリスクになるなんて悲しい。だからそんなことにならないようにと生まれたのが年金という名の保険なのです。

関連記事➡「年金は保険である」受給開始年齢の今だからこそ知っておきたい年金の基礎知識

「自分に関係のない言葉」が年金を難解に

厚生労働省による年金制度の歴史についての説明をみてみると、とても複雑な経緯をたどって来たことがわかります。

まずは、ややこしさの原因と思われる年金の歴史に着目してみましょう。

年金の歴史が生み出したややこしさ

年金制度は幾度かの改正を経て現在の形になっています。そして少子高齢社会へ対応するために今現在も制度を改正し、さまざまな見直しを行っています。

この「現在も続いている改正」というのが、年金制度のややこしさの大きな原因なのです。

ただでさえ難しくて分かりづらい年金の話をさらにややこしくしている言葉のほとんどが、昭和60(1985)年におこなわれた少子高齢化対策を目的とした制度改正の際に生まれたのです。

制度改正では、不平不満の噴出をできるだけ抑えるために「移行措置」というものが必要になります。その移行措置というのは「1年違って大違い」のようなことがないように、長い期間を使って段階的に制度の内容を変えることでもあります。

そして移行措置につきものの「特例」というものが年金制度を難解にしているいちばんの原因なのです。

生年月日でわかる「自分に関係ない言葉」

「制度改正」のための「移行措置」と、それが生んだ「特例」。そしてその「特例」の対象に該当する人にだけに関係のある言葉が生まれ、該当者かどうかは「生年月日」によって決まります。

その生年月日が、
男性:1961年(昭和36年)4月2日
女性:1966年(昭和41年)4月2日
となっています。

この日より前に生まれた人は特例の対象者となり、逆にこの日以降に生まれた人には関係のないものになります。

おわかりのとおり、この青年月日は還暦前後の私たちには微妙なところです。しかしもしこの特例に該当しないのであれば、知らなくてもいい言葉がいくつかあります。

ではこの生年月日にあてはまる人には関係のない年金用語を見てみましょう。

要確認!自分に関係のない3つの言葉

制度改正による移行措置が生み出した、年金の説明によく出てはくるものの、生年月日によっては関係のない3つの言葉を見てみよう。

①特別支給の老齢厚生年金
②振替加算
③厚生年金の定額部分

《特別支給の老齢厚生年金》

これは、年金の支給開始が60歳から65歳に引き上げられたときに、反発や混乱を避けるために作られた、65歳にならなくてももらえる年金のことです。

突然、制度が変わって受給開始が5年延びたとしたら大騒ぎになります。

そこで、51歳からもらえる人、52歳からの人、53歳、54歳という感じで段階的に少しずつ支給開始の年齢を上げていったというわけです。

その移行措置の期間が終了するのが、男性は2025年、女性は2030年で、それ以降はすべての人が65歳からの受給開始となります。つまり、その年までに65歳になっていない人には関係ないということになるのです。

《振替加算》

1986(昭和61)年の年金制度改正で、20歳から60歳になるまでのすべての人が強制的に国民年金に加入することになりました。

「振替加算」はそれまで年金に加入していなかった専業主婦と、保険料を免除されながらも年金に加入しているとみなされる「会社員の夫に扶養されている専業主婦」との差をなくすために設けられた制度です。

そして性質上、この振替加算にも生年月日によるラインが引かれ、振替加算がもらえるのは、制度改正が行われた1986年4月に20歳になった専業主婦の人まで。つまり、1966(昭和41)年4月以降に生まれた女性は振替加算の対象外となるのです。

《厚生年金の定額部分》

 昭和29年の制度の改正で、老齢厚生年金は「報酬比例部分」と「定額部分」とに分けられました。

「報酬比例部分」は、厚生年金の保険料を支払った期間とその時の給料で計算され、「定額部分」は、厚生年金の保険料を支払っていた期間の長さのみで計算されます。

60歳だった老齢厚生年金の受給開始年齢が65歳になり、その移行期間が終わる年には、「報酬比例部分」は「老齢厚生年金」へ、「定額部分」は「老齢基礎年金」へ、それぞれ引き継がれることになります。

そしてこの「厚生年金の定額部分」という言葉は、男性は2025年、女性は2030年の時点で無くなるということなのです。(報酬比例部分という言葉は残り、場面によっては登場する)

関連記事➡効率よく年金を学ぶための、生年月日でわかる「自分に関係のない言葉」

不安のもと「年金は破綻する?」

年金破綻説とは、年金制度自体が存続できなくなり、私たちが老後の頼りにしている老齢年金も貰うことができなくなるということを意味しています。

そんなことが現実に起こる可能性はどれくらいあるのでしょう?

年金破綻説の3つの根拠

しばしば報道を賑わす年金破綻の理由として上げられるのはこの3点です。

①少子高齢化で年金は先細りしていく
②不祥事の多い年金制度運営
③年金資金の運用に失敗

《少子高齢化で年金は先細りしていく》

年金保険料を納める現役世代と年金を受け取る高齢者のバランスは、「おみこし型」から「騎馬戦型」になり、やがて「肩ぐるま型」へと推移していきます。

少子高齢化がこのまま進めば、若者の負担が大きくなりすぎて支えることが出来なくなるということなのです。

《不祥事の多い年金制度運営》

2007年、ずさんな事務管理が原因で起きたこの年金記録問題は「消えた年金」問題と呼ばれて年金機構は大きな批判を受けました。

他にも、個人情報の漏洩や不正に行われた免除手続きなど、年金の管理体制の問題が多数指摘されています。

《年金資金の運用に失敗》

GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)による年金資金の運用実績について、多くの損失が報告されています。

このような事実はたしかに「年金制度の破綻」という不安を感じるのに十分な理由になります。 

年金破綻しない説の3つの根拠

年金は破綻しないという意見の理由はこの3点です。

①年金保険料の納付者と年金受給者の数のバランスは人口ピラミッドからは読み取れない。
②年金の財源を確保するために、国は常に税制や年金制度の改正を行っている。
③年金資金の運用はトータルではうまくいっており、資金を堅実に増やしている。

《納付者と受給者のバランス》

少子高齢化は確かに進んでいますが、それにともなって高齢者の労働人口も増え、さらに年金を受け取り始める年齢も高くなっています。

つまり、保険料を納付する人の数と年金を受け取る人の数との比率は人口ピラミッドから見えてくるような状態とは違っているというものです。

《原資を増やすための制度改正》

国としても、年金保険料を払う人の比率を大きくするために、高齢になっても働きやすい社会や、主婦の方々がたくさん働いた方が得する税制や社会保障のさまざまな仕組みを考えています。

また、年金額が増える繰り下げ受給年齢の上限を引き上げるなど、さまざまな施策で年金をもらう人と年金保険料を払う人のバランスを保とうとしています。

《堅実な資金運用》

破綻説の根拠にもなっている資金運用失敗による巨額な損失は事実なのですが、実際の運用実績を見れば、トータルではかなりうまく運用しているのがわかります。

厚労省の報告によれば、2020年までの累計で100兆円以上の黒字となっていて、資金を堅実に増やしているのです。

破綻しないが徐々に縮小?

このように「年金破綻説」と「破綻しない説」の両者に根拠がある以上、どちらとも否定することは難しいと思います。

とはいえ、長い間その破綻が囁かれながらも、今のところ年金制度は維持されています。

その理由は、年金が保険と同じ仕組みで運営されているからなのでしょう。

保険は集められる保険料、支払われる保険金、あらゆることが起こる確率などを計算しつくした上に出来上がっていますから、理論的にはそのバランスが大きく崩れない限り破綻はしないということになります。

そしてその計算は常に行われ、世の中の変化に合わせて常にバランスを取るための措置がとられています。

つまり、年金が保険と同じ仕組みの中で動いているかぎり、突然の破綻というのは考えづらいということなのでしょう。

しかし、受給金額は少しずつではあるものの減少を続けていて、決して明るい未来が開けているわけではありません。

関連記事➡少子高齢化で年金は破綻する?あまり聞こえてこない「破綻しない説」の4つの根拠

まとめ

自分自身が受給する立場に近づくと、年金についての不安も大きくなってきます。

しかし、年金が持っている保証の内容を確認したり、年金の本質的な意味を考えたりすることで、だいぶ見方を変えることもできるのです。

「年金は保険である」そう考えると、払い損とか元が取れないとかいう悶々とした気持ちも少しは薄らぎ、今まで払ってきた保険料にも納得ができそうな気がします。

年金制度が破綻するかどうかの答えはかんたんには出せません。これは年金のことに限ったことではありませんが、私たちをいつも悩ませるのはこの正反対の意見です。だからこそ、両者の主張を吟味したり、その根拠を検証するなどして、自分なりの考えを持つことが必要になってきます。

そのためには最低限の知識が必要になります。

年金制度は社会状況の変化に合わせて幾度かの制度改正がなされ、その過程で生まれた「経過措置」や「特例」が制度の複雑さや分かりづらさの原因になっています。

しかし歴史的な背景や、世の中の変化の中で必要に迫られて移り変わってきた事情などに触れることで、多少は理解しやすくなるのではないでしょうか。

人生100年時代。年金制度はまさに人生を終えるその瞬間まで私たちの暮らしを支えるものですから、ややこしさやめんどくささに負けずに向き合っていきたいものです。

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