「年金制度は破綻に向かっている!」
30年以上も前から囁かれていたそんな噂は、受給年齢が目前に迫った今になってもあいかわらず聞こえてきますね。
その「年金破綻説」の根拠のいちばんに挙げられる少子高齢化は現実に進んでいて、今後しばらくはその傾向は変わりません。
ということはやはり、近い将来年金は破綻するのか?それとも、破綻するするといわれ続けながら未だに制度が保たれているところを見ると、破綻説はデマなのか?
ということで今回のテーマは・・
「年金は破綻しない説」の4つの根拠!
お金がない60歳にとって、たとえ金額が少ないとしても頼りにしているのがこの年金です。
不安を掻き立てられる情報に比べてあまり聞こえてこない「少し安心できるお話」に着目してみましょう。
年金破綻説っていったい何?
はじめに年金破綻説についてまとめてみましょう。
年金破綻とは、年金制度自体が存続できなくなり、私たちが老後の頼りにしている老齢年金ももらうことができなくなるという、とても恐ろしいことなのです。
その年金破綻のいちばんの原因といわれているのが少子高齢化。
年金を受け取る老いた世代が増えて、年金の保険料を負担する若い世代が減っていけば、制度が危うくなるのは容易に想像できます。
それに加えて、
不祥事の多い年金制度運営や年金資金の運用失敗など、
不安を増す事実が時おり報道されていますから、年金破綻説が現実味を帯びてくるのもうなずけますね。
年金破綻しない説の4つの根拠
「年金は破綻しない」その理由としては4つの視点があります。
①人工ピラミッドと労働人口の関係
②年金資金運用の実態
③財源確保のための制度改正
④保険と同じ制度設計
破綻しない根拠①人工ピラミッドと労働人口
これは年金保険料を納める現役世代と年金を受け取る高齢者のバランスのお話。
65歳を境目にして、高齢者1人を何人の若者が支えるか?
この点については、こんな例えが使われます。
1980年代は若者7人で高齢者1人を支える「おみこし型」
2010年代は若者3人で高齢者1人を支える「騎馬戦型」
2065年は若者1.3人で高齢者1人を支える「肩ぐるま型」
このままでは制度が持たないというとても分かりやすいたとえですね。
しかしここでこんな視点から見てみましょう。
年金保険料の納付者と年金受給者の数のバランスは人口ピラミッドからは読み取れない。
少子高齢化は確かに進んでいますが、それと同時に高齢者の労働人口も増えていて、さらに年金を受け取り始める年齢も高くなっています。
要するに、
単純に65歳という年齢で老人と若者に分けることに疑問を持つべきだということなのです。
破綻しない根拠②年金資金運用の実績
私たちが納めた年金保険料は株式投資などで運用されているわけですが、その運用実績について、
「2019年度は8兆円程度の損失」
「2020 年 1 ~ 3 月期は 17 兆円程度の損失」
という報告がされていますが、
年金資金の運用を行っているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の報告によれば、運用はトータルではうまくいっているようです。
厚労省によれば、2020年までの累計で100兆円以上の黒字となっている。つまり資金を堅実に増やしているのです。
もちろん投資では損失を出すこともあります。テレビ報道などではそういうケースを大きく取り上げているのだという見方もできます。
破綻しない根拠③財源確保のための制度改正
年金の財源を確保するために、国は常に税制や年金制度の改正を行っています。
国としても、年金保険料を払う人の比率を大きくするために、「高齢になっても働きやすい社会」や、「主婦の方々がたくさん働いた方が得する税制や社会保障」のさまざまな仕組みを考えています。
そして年金制度も改正されています。
年金をもらい始めるのは基本的に65歳ですが、これについては「繰り下げ」という選択もできます。
その繰り下げられる年齢の上限が、70歳から75歳に引き上げられたのです。
受給開始を繰り下げれば年間でもらえる年金の金額は多くなります。
増額できる幅を広げて「先送りすればするほ得をする」という感じのお誘いをしているわけです。
このように、さまざまな施策で年金をもらう人と年金保険料を払う人のバランスを保とうとしています。
破綻しない根拠④保険と同じ制度設計
これは年金制度の本質的な話といえます。
年金は保険と同じ仕組みで運営されています。保険というのはとてもよくできた仕組みで、集められる保険料、支払われる保険金、あらゆることが起こる確率などを計算しつくした上に出来上がっているのです。
そしてその「計算」は常に行われ、世の中の変化に合わせて常にバランスを取るための措置がとられています。
平成16年に導入されたマクロ経済スライドという仕組みも、このバランスをとるためのものです。
その結果として経済状況によっては年金の受給額が減ってしまうという可能性も出てきますが、
この基本的な制度設計と常にとられているさまざまな措置によって、突然の破綻というのは考えづらいということなのでしょう。
まとめ
長い間言われ続けている「年金破綻説」をもとに、あまり聞こえてこない「破綻しない説」について見てきました。
どちらの考えにも根拠がある以上、どちらとも否定することは難しいと思いますが、
破綻が噂されながらも年金制度が維持されてきた事実、そして破綻しない説の根拠を合わせて考えると、今すぐ、急に破綻を迎える可能性は低いと考えられます。
とはいえ、受給金額は少しずつではあるものの減少を続けていて、決して明るい未来が開けているわけではありません。
あまり悲観的になる必要はありませんが、制度に身をゆだねるのではなく、年金に頼らない働き方や暮らし方について考えることが求められているのでははないでしょうか。
そのためにも、まずは年金制度についてよく知ることが大切です。
特に、受給開始の年齢や、年金と仕事の関係、受給額の増やし方などは、特に「お金のない60代」が直面している大きなテーマです。
制度の分かりづらさに負けずに知識を増やしていきましょう!
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